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霊脈上の一軒家 6 ページ47

「ともかく、無事に拠点を確保することができて良かった。アルジュナ、見つけてくれてありがとう」

Aがアルジュナに礼を言うために彼のいる方を向くと、アルジュナは一軒家の玄関をじっと見つめながら腕を組んでいた。

「……アルジュナ?」

「…いえ、すみません。考え事をしていました」

声をかけられたことで我に返ったアルジュナが謝罪しながらAに視線を向けると、Aの隣にいた鈴鹿御前は「らしくないじゃーん」と彼に野次を飛ばした。

「ジュナっちがボーッとするなんて珍しい。もしかして、さっき言ってた問題点ってのがまだ引っかかってんの?」

「えぇ。拠点取り壊しの危機は免れましたが、もうひとつだけ」

そう言ってアルジュナは一軒家の玄関先に2人を手招きし、鈴鹿御前をドアの前に立たせた。

最初こそ訝しげな表情を浮かべていた鈴鹿御前だったが、耳や尻尾の毛がゾワゾワと逆立つような、それでいて力が漲るような感覚を覚え、ようやく彼の行動の意図を読み取る。

「もしかしてこの家、霊脈の真上に建ってる…?」

「恐らくはそうでしょう。霊地の上なら魔力供給の拠点としてはかなり理想的なのですが…偶然にしては、あまりにも出来すぎていると思いませんか?」

霊脈。それは大地を流れる魔力の通り道であり、英霊たちが消費した魔力を補う時や、大掛かりな魔術を行使する時などに重要視されるポイントである。
霊脈には稀に魔力の溜まり場となっている箇所があり、そこは霊地と呼ばれている…と、カルデアで読んだ『一般人でもわかる!魔術入門書(作:ダヴィンチ)』に記されていた。

たまたま見つけた空き家が、霊脈の真上…しかも霊地に建っており、さらに持ち主はAと一度顔を合わせたことのある貴族。
確かにこれほどまでにお誂え向きな展開が重なれば、何かおかしいのではないかと疑問に思うのは道理だろう。

「…確かにちょっと偶然が過ぎるけど、霊脈の上だからって何かあるわけじゃないっしょ。
ま、ラッキーだったって事でいいんじゃない?」

「それに、もう契約しちゃったからね。
何かあったらその時考えようよ」

持ち前のポジティブさをフル稼働させ、鈴鹿御前と2人で「問題なし」の議決を下したAは、鍵穴に挿した銀の鍵をぐるっと回し、木製のドアを勢いよく開く。
彼女たちの反応に意表を突かれたアルジュナは「まったく、貴女たちはいつでも前向きですね」と笑い、探索を始めた2人の後を追って家の中へと入っていった。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時

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