霊脈上の一軒家 4 ページ45
「このお家、主人が私に誕生日のプレゼントとして贈ってくれた家なのだけれど。毎年あらゆる町に一軒ずつ建てるものだから、手に余ってしまって」
「毎年家をプレゼントとか、お金持ちの道楽としか思えないんだけど…」
解体業者が立ち去った後。
立派な一軒家を前にして唖然とする鈴鹿御前に、貴婦人は「でしょう?私もそう思うわ」と同意の言葉を添え、扇子で口を隠しながら困ったように笑った。
「主人はお金をたくさん使って権威を見せびらかすことを良しとしているけれど、私はそうは思わないの。使わない家なんて埃が溜まるだけよ」
この貴婦人は自分の夫が嫌いなのだろうか。
そう言いたげな視線に気づいたのか、貴婦人は声を潜めてAに耳打ちした。
「政略結婚というものよ。当事者としては、あまり気分のいいものではないわ」
政略結婚。
自分とは程遠い世界の言葉に目を丸くしたAの様子を見て、彼女は再び愛嬌のある笑顔を見せる。
「でも、悪いことばかりじゃないのよ。ドーリスへ視察に行ったことで、あなたと偶然再会できたという喜びを味わえたのだし。
…そういえば、建物の取り壊しを阻止していたみたいだったけれど。なにか御用だったかしら?」
貴婦人のマイペースな優雅さに圧倒されていた一行は、彼女の言葉でようやく当初の目的を思い出した。
「私たち、マグノリアで家を探していまして。
それでこの家が売り出し中だったのを見かけて、急いで来たんです」
Aが貴婦人にそう説明すると、貴婦人はパッと表情を明るくしてAの手を取った。
「まぁ!このお家買ってくださるの!?
ずいぶん前から売り出していたのだけれど、買い手がつかなくて困っていたの。大切に使うと約束していただけるなら、半額でお譲りするわ」
「ちなみに、半額だとおいくらに…?」
恐る恐る訊ねたAに、貴婦人は再び耳打ちで答える。
今までのバイト代とドーリスの人々からの寄付金を合わせれば、払えない額ではなさそうだ。
その代わり貯蓄は無くなってしまうため、明日からは全力で働かなければならない。
その旨を鈴鹿御前とアルジュナに伝えると、2人は一瞬の思考の末に「まぁ何とかなるだろう」という結論に至り、深く頷いた。
サーヴァントたちの同意を得たAは貴婦人のほうを向き、一世一代とも言えるであろう台詞を並々ならぬ決意とともに放つ。
「この家、買います!」
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時