霊脈上の一軒家 3 ページ44
「で?その『気になる拠点』ってどんなの?」
町の人々に不審がられないようにと人通りの少ない路地を選んで進むアルジュナに、鈴鹿御前が後方から声を投げかけた。
彼女の腕の中では、Aが落とされないように縮こまり、必死に口を噤んでいる。
「見た目は一般的な戸建て住宅でした。ですが取り壊し寸前のようで…作業員らしき人物が管理者の女性と話している様子が見えたのです」
「なんで管理者だって分かったの?」
「売り出し中の看板を手ずから外していました。あの物件の管理者か、それに類する者で間違いないでしょう」
「取り壊しが始まる前に、急いで話をつけないと…ってことか。それならそうって先に言ってくれればいいのに」
「説明している時間も惜しかった。それだけのことです」
言葉を交わしながら走り続けると、一行はふいに開けた場所に出た。
通りの途中に位置するであろう円形の広場は、夕食の買い物に来た主婦と荷物係の子供たちで賑わっている。
どうやらここは、マグノリアの西側にある小さなマーケットのようだ。
その広場に面して並び立つ一軒家のひとつに、今にも解体が始まるのではと思しき人数の作業員が、大きな槌を手にして集まっている。
「あの家です!」
「かしこまり!」
アルジュナがその建物を目線で示すと、鈴鹿御前はその場にAをゆっくり下ろし、物凄いスピードで作業員たちのいる場所に駆けて行った。
「その解体作業、ちょっと待ったー!!」
彼女の声に気づいた作業員たちが、担いでいた槌を地面に置いてこちらを向く。
「なんだぁ嬢ちゃん。この家に何か用か?」
作業員の中でも一番屈強な大男が鈴鹿御前に問う。
鈴鹿御前はちらりと後方を見やり、アルジュナとAがもうすぐそこまで追いついてきているのを確認してから大男に話しかけた。
「この家、さっきまで売り出し中だったよね?」
「おう。でも買い手がつかねぇとかで、壊してくれって依頼があってな」
「管理者ってどこにいるの?」
「さっきまで俺らと話してたから、そう遠くには行ってねぇはずだが…」
すんでのところで解体は止められたものの、家の持ち主とは入れ違いになってしまったようだ。
このまま作業員たちには待ってもらって、今度は管理者を探さねば……
「まぁ!まぁ、まぁ、まぁ!
あなた、確かドーリスでお会いした方ではないかしら!」
声に驚いたAが振り向くと、そこには見覚えのある貴婦人が、とても嬉しそうな表情で佇んでいた。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時