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朝焼けの中でさよならを 3 ページ5

翌朝。いつもより早めに起床した一行は、フルール通りの朝市を訪れていた。

「パンとリンゴと缶詰と…あと長持ちしそうなやつは…」

「マスター、あちらに干し肉が売られていますよ」

「スープにすると美味しいんだよね。よし、あれも追加しよう」

これから旅立つスティングとレクターへのせめてもの餞別として食料を買い込んでいくAと、それに付き添うアルジュナ。
その様子を遠巻きに眺めながら、鈴鹿御前はベンチに座って待っている1人と1匹にクレープを差し出す。

「ありがとうございます。でも、いいんですか?こんなに良くしてもらって…」

「いーのいーの!マスターがやりたくてやってるコトだし。人からの厚意は素直に受け取っとくのが吉って言うじゃん?」

自分の体躯と同じくらいのイチゴクレープを抱えたレクターが不安げに問うと、鈴鹿御前はまだ眠そうにぼんやりしているスティングの鼻に生クリームをくっつけながら笑って答えた。

「私たちも2人に色々お世話になったしね。迷惑かけちゃったとも言うんだけど…まぁ、そのお詫びは『次に会った時に本気でバトルする』ってことで」

彼女の発言に、微睡んでいたスティングがキュピーンと目を覚ます。

「ホントか鈴鹿さん!?約束だぞ!絶対だぞ!?今度は手加減抜きで俺が勝つんだからな!!」

「うわっビックリした。てか鼻に生クリームつけながら吼えられても、全然怖くないんですけど」

「生クリーム?」

鈴鹿御前が自分の鼻先を人差し指でトントンと示すと、スティングはそれに倣って自らの鼻に手を当てた。
手のひらに伝わる柔らかい感触。意識した途端に鼻の奥を襲う甘ったるい香り。

「うぉあ!?なんで俺の鼻にこんなものが!?」

「あっははは!スティングってばマジウケる!
眠気の極みすぎて気づかないとかヤバいっしょ!」

「もう鈴鹿ちゃん、暇だからって食べ物とスティングで遊ばないの」

爆笑する鈴鹿御前の背後から、買い物を終えたAが注意を飛ばす。
そして「俺はオモチャじゃねぇ!」とイチゴクレープを一息に食べ尽くしたスティングの隣に布袋を置いた。

「アルジュナにアドバイスを貰って、旅の途中でも簡単に食べられるものを中心に詰めてもらったよ。たぶん数日くらいなら余裕で持つと思う」

スティングがお礼を言って、紐で絞られている少し大きめな巾着袋の口を解き中を見ると、隙間なく詰め込まれた食材たちが窮屈そうに顔を覗かせていた。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時

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