人理の紋、妖精の紋 ４ ページ40
｢何も言わずに突然殴るなんてヒデェ奴だぜ、まったく｣
｢不意討ちで一発ガツンとか卑怯だろあいつ！｣
数分後に同時に意識を取り戻した2人が、エルザへの不満と思しき言葉を次々吐いていく。
｢あんたたちがケンカしてるのが悪いんじゃない｣
ため息混じりに正論をかますルーシィの言葉も、いまの2人には届いていないようだ。
｢納得いかねー！次に会ったらぶっ飛ばす！！｣
大人数用のテーブルに所狭しと並べられた料理を口に流し込むナツ。
彼専用メニューだというその料理たちは、どれも灰燼と化してしまいそうなほど燃え盛っている。
｢…というか、炎なんて食べて火傷しないの？｣
｢ナツは炎を食べてエネルギーに変える力を持ってるのよ。竜撃退用の魔法を使うから、
左隣で煌々と揺れる炎を恐ろしげに眺めていたAの問いにルーシィが答えると、斜向かいに座っていたグレイが視線をこちらに向け、Aに声をかけた。
｢そういやお前、見たことない顔だな。新入りか？｣
｢あっ、そういえば挨拶してなかった。英霊魔導士のAです。こっちにいる2人は私の
Aの右隣に座っていた鈴鹿御前とアルジュナがそれぞれ反応を返すと、グレイは面白そうに口角を上げる。
｢オレはグレイ・フルバスター。氷の造形魔導士だ。…ずいぶんルーシィと仲がいいみてぇだが、幼なじみか何かか？｣
｢ううん。ルーシィとはドーリスの町で知り合って仲良くなったの。幼なじみではないけど…｣
Aはルーシィをチラリと見たあと、少し気恥しそうに笑った。
｢友達…になれたらいいなぁ、って｣
｢か、っわ…｣
自らの顔を覆いながら謎の言葉を発したルーシィが、椅子から立ち上がってAの背面に移動し、後ろから抱き締める。
｢あーもう、なんて可愛いこと言うのかしら、あたしの後輩は！
友達よ！あたしとAはもうとっくに友達！｣
そう言ってAの橙髪を撫でるルーシィに、懐疑的な視線がふたつ向けられる。
｢後輩…？ルーシィ、この間ギルドに来たばっかじゃねぇか｣
｢あい。コレはきっとアレだよ。『先輩ヅラ』ってやつだよ｣
｢そこ！聞こえてるわよ！！｣
わざわざ辞書を持ち出してヒソヒソとやっていたナツとハッピーにチョップを食らわせるルーシィ。
抱擁から解放されたAは、その騒がしさに心地良さを覚えつつ、乱れた髪を手櫛で整えた。
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作者名：空思鳴 | 作成日時：2020年9月19日 1時
