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人理の紋、妖精の紋 3 ページ39

「それでね、魔導士の仕事にも色々な種類があって___」

ルーシィがAたちに向かって丁寧に依頼書の何たるかを説明していた時、突如ギルドの入口付近から鋼を殴りつけたかのような甲高い打撃音が響いてきた。

「な、なに…?」

驚いたAが振り返ってギルドの出入口に視線を向けると、そこには鎧を纏った女性がひとり。
外から入り込む日光が彼女の長い髪をきらきらと輝かせ、その身に宿す強者のオーラをより一層際立たせている。

「(緋色の、騎士___)」

心の中でそう銘打ち、Aが彼女の足下に目を向けると、先程までその場で喧嘩をしていたナツと黒髪の青年__グレイが大きなタンコブを作って地に伏していた。

…最初に聞こえてきたあの音は、どうやら鋼()殴りつけたのではなく、鋼()殴りつけた音だったようである。

「おかえり、エルザ!」

「おお、エルザが帰ってきた!」

「今日はあのでっけーツノは無ェよな?」

ギルドのメンバーが口々に彼女に声をかける。
表情は多少強ばっているものの、心では皆、彼女の帰還を喜んでいるように感じた。

緋色の騎士は迷いなくギルドの中を直進し、カウンターに座るマカロフの前に立つ。

総長(マスター)。ハコベ山の人喰い熊討伐、およびバルカンの巣の掃討。共に完了しました」

「ごくろう。無事でなによりじゃ」

剣のように鋭く美しい声でマカロフと一言二言の会話を交わした彼女は「私用があるので、これで」と残し、再びマグノリアの町中へ消えていった。

ほとぼりが冷めたようにギルドの面々がどんちゃん騒ぎを再開したころ、Aは出入口を指さしながらルーシィに問う。

「ねぇルーシィ、いまの人は?」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女魔導士、妖精女王(ティターニア)のエルザよ。あたしもこの間一緒に仕事したんだけど、もうすっごーく強いの!」

「ギルド最強の魔導士と仕事…って。もしかしてルーシィ、意外と凄い人だったり?」

冗談めかして疑惑の視線を送る鈴鹿御前に「違う違う!ミラさんに頼まれて、偶然共闘しただけよ!」と弁解するルーシィ。

「あの…マスター?」

戯れにも似た女性陣の会話に水を差していいものかと悩んでいたアルジュナが、意を決してAを呼ぶ。

「ん?どうしたのアルジュナ」

「…彼ら、放っておいても大丈夫なのでしょうか?」

彼が視線を向けたギルドの入口付近には、未だにナツたちが倒れたまま放置されていた。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時

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