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人理の紋、妖精の紋 1 ページ37

総長(マスター)、こちらです!」

カウンターに戻ってきたミラはスタンプのようなものを片手に持ちながら、振り返って総長(マスター)らしき人物へと声をかけた。

「これ、そう急かすでない…うぅむ、昨日はちと飲みすぎたか…」

少し嗄れた男性の声がAたちに近づいてくる。
これほどまでに大きく、そして名のあるギルドの長だ。いったいどのような傑物なのだろう。

息を呑んで身構えるカルデアの一行。
やがて、フロアの裏から人の影がぬぅっと伸びてきて___

「おぉ、おぬしらが新入りか。よく来たのう」

Aたちに向かって、細枝についた紅葉のごとき手をぴょこんと上げた。

「(ち、小さい…!)」

思わず声に出しそうになり、流石に失礼だろうと口を噤むAの隣で、鈴鹿御前が率直に「()っさ!!」と言葉を発した。
その後ろで呆気に取られていたアルジュナもすぐさま我に返り、小声で「鈴鹿!」と叱責を飛ばす。

「気にせんでもよい。それしきのこと、言われ慣れとるわい」

御伽噺に出てくるドワーフのように小柄な老人は、呑気な欠伸をひとつ放ち、何も無い空間から煙管を取り出した。

総長(マスター)、禁煙期間中ですよ」

「むぅ…」

笑顔を崩さぬミラにそう咎められた老人は、不服そうな唸り声を上げて煙管をポワンと消す。
これも魔法なのだろうか。

「紹介するわね。こちら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)総長(マスター)・マカロフ。
総長(マスター)。この子が新入りのAです。ルーシィの知り合いなんですって」

「は、はじめまして。英霊魔導士のAです」

ミラに促されるままマカロフの前に立ったAは、緊張しながらも恭しく頭を下げる。

「ふむ。そこの2人はおぬしの使い魔か?」

ぴょーんと跳躍してカウンターの上に着地し、その場で胡座をかいたマカロフは、いつの間にやら出現させた木の杖の先端をサーヴァントに向けてそう問うた。

「えぇ。我々は主たるAに仕えし英霊(サーヴァント)

「セイバー・鈴鹿御前とアーチャー・アルジュナ!ここに見参だし!」

息の合った台詞繋ぎで名乗りを上げた2人は、マカロフの威厳ある声音に怯むことなく、そのままAの横に並び立つ。

杖の先端に鋭い視線を乗せていたマカロフは大きく息を吐き、下ろした杖の先端をカウンターにコツンと叩きつけ___



「よろしくネ!」




___朗らかな声と表情で、ニッと笑った。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時

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