英霊魔導士、フィオーレを征く【第２幕】 (ページ21)

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英霊魔導士、妖精と出会う１ページ21

｢フォルミス・クロサンドラの捕縛およびクロサンドラ盗賊団の掃討、感謝致します！｣

あちこちで気を失っていた盗賊たちがひとり残らず拘束され、護送車に詰め込まれていくのを背景に、軍隊の隊長らしき男性がAとサーヴァント2人に敬礼する。

｢そんな、感謝されるようなことは何も…
盗賊団の頭領を倒したのは、厳密に言えば彼らですから｣

Aは振り返って金髪の少女の前で正座している桜髪の少年と青い猫を指さした。
金髪の少女は『請求書』と書かれた紙束を手に、何やら悲嘆に暮れている。

｢道中に壊した屋台が3つ、ショートカットとか言って無理やり通り抜けた民家が2軒、爆風で割れたガラスが66枚…もー！どうすんのよ、これ！！｣

｢あれくらいで壊れるガラスが悪ィ｣

｢そういう問題じゃないでしょ！？｣

｢ルーシィ、あんまり怒るとシワ増えるよ｣

｢うっさいネコ！！｣

数十メートル離れていても内容までハッキリ聞こえてくるその会話に、隊長らしき男性は苦笑いを零した。

｢クロサンドラ盗賊団には我々軍隊も手を焼いていたんですよ。いくつかのギルドへ討伐依頼を出したとは聞いていましたが、まさかあの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の方々が引き受けて下さっていたとは…｣

妖精の尻尾(フェアリーテイル)。
聞き覚えのあるその名前に、Aはすかさず反応を返した。

｢それって、魔導士ギルドの？｣

｢はい。彼らの犯人検挙率には目を見張るものがありますが、そのぶん巻き添えになった周辺地域からの苦情も目立ちましてねぇ｣

｢あはは、何となく想像がつくような…｣

請求書を片手に憤慨する少女の説教を、悪びれる様子もなく欠伸しながら聞き流す少年と猫。

彼らのような強者(バーサーカー)が他にも大勢いるのかと思うと、そのギルドが破壊した物の処理に日々頭を悩ませているであろう軍隊員たちの胃が心配になってくる。

｢彼らにも依頼達成の報酬が支払われることでしょう。それでは、我々はこれで｣

そう言って数台の護送車と共に街道に繋がる道へと消えていく軍隊を見送った後、Aたちは未だ不毛な説教を続けていた金髪の少女のもとへ向かった。
そして、桜髪の少年に対し恭しく頭を下げる。

｢助けてくれて、ありがとうございました｣

突然見知らぬ少女たちに謝辞を述べられた少年と猫、それと金髪の少女は、驚いてぱちくりと目を丸くした。