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ドーリスの酒場 2 ページ17

「大丈夫かなアルジュナ…」

「ジュナっち、私が引くレベルでブチ切れモードだったし…」

どったんばったんと荒っぽい音が聞こえてくる酒場の外で、Aと鈴鹿御前は木箱を盾にして中の様子を伺っていた。
窓から見る限りでは、圧倒的にアルジュナが優勢のようだ。
騒ぎを聞きつけたのか、店の周りには大勢の野次馬が集まりつつある。

「なんだなんだ?ケンカか?」

「なんか、酒場のゴロツキどもに1人でカチコミしに行った奴がいるらしいよ」

「うっわ命知らずかよ…マジありえねぇ…」

野次馬たちがざわつく。
町の人々はそれほどまでに、酒場でたむろしているゴロツキたちに恐れを抱いているのだろうか。

「…ここにいる連中、そんなに怖いの?」

鈴鹿御前が近くにいた野次馬に問う。

「怖いなんてモンじゃねぇよ…あいつらが来てからドーリスの治安は悪化する一方。町の警察も手に負えねぇほど凶暴な奴らなんだぜ」

「へぇー…」

中身のない相槌を返しつつ、再び窓から酒場の中を覗く。
武器を持って襲いかかってくるゴロツキたちを、アルジュナが徒手空拳で次々と返り討ちにしている姿が目に入った。

「…マスター」

「あー…うん、そろそろ止めよう」

いい加減ゴロツキのほうが可哀想に思えてきた2人は、巻き込まれないよう慎重に酒場の扉を開ける。
案外広めな店内を見渡すと、奥の方でゴロツキの集団とアルジュナが対峙していた。

「なんだテメェ!オレたちにケンカ売って、ただで済むと思うなよ!」

「それはこちらの台詞です。我がマスターを狙ったこと、地獄で後悔するといい」

アルジュナは自らの額に片手を当て、その場にふわりと浮き上がる。

「ちょ、アレまさか…!?」

「神性領域拡大、空間固定、神罰執行期限設定__」

それはAにとって、何よりも聞き覚えのある詠唱。
破壊神シヴァより授かりし対人宝具『破壊神の手翳(パーシュパタ)』を発動させるもので____

「れ、令呪1画を以て命じる!アルジュナストップ!!」

「こんなトコでそんなモン使ったら、町ごと跡形もなく吹き飛ぶし!!」

__もちろん、こんな町中の屋内で解き放っていい代物では決してない。

シヴァに詠唱を全承認される前に何とか食い止めなければ…そう考えたAは、アルジュナに対して致し方なく令呪を行使することにした。

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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年8月26日 16時

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