少年少女エクスピエート【劣等少女３章】

16. 国境 ページ16

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　Aは抱きしめられたことに戸惑いながらも、わざと冗談めかして一緒に行く意思を伝える。

　それにしても、ここで抱きしめるなんて反則だ。胸の高鳴りと包まれた安心感で満たされた気持ちになってしまう。
　でも、だからこそ、この大切な人を一人で行かせたくない。ヴィオルドが彼女を連れて行きたくないのと同じように。

「ヴィオが私に来て欲しくないのと同じで、私も貴方に一人で行って欲しくない。だから、私は自分の意思で決める」

「……わかった、俺の負けだ。だが、危ないと感じたらすぐに逃げろ。さっきの魔法なら逃げられるだろう」

「……いいわ、そうする」

　ヴィオルドを置いて逃げるつもりは毛頭無いが、ここで承諾しておかないと一緒に行けない。Aは敢えて同意することにした。

◇◆◇

　国境付近には多くの兵士が警戒態勢を取っていた。コリスツィア王国へ観光に来ていた近隣諸国の住民が出国のために審査を受けている。少しでも怪しい動きをすれば、すぐにでも締め上げられそうだ。

　そんな緊張が覆うなか、旅の支度をしたAとヴィオルドが検問に並んでいた。二人は落ち着いた色のマントを羽織り、フードを被っている。見張りをしている兵士の一人はヴィオルドの顔見知りであったようで、彼に気づき驚いて声をかける。

「あれ、ヴィオルドさんですよね？ どうして出国するんですか？」

「独自に例の件の調査をしたくてな。これからカタリカ王国へ向かう。それと、俺達がコリスツィア人だと知られない方がいい。発言は慎重に頼む」

「すまなかった。気をつけますよ。――検問に並ぶのは時間がかかりそうだ。こっそり別の出口に通します」

「助かる」

　顔見知りの兵士に連れられて、二人は小さな門へとたどり着いた。見張りの兵士が数人いる程度で、普段は使われていない門のようだ。彼が他の兵士にも事情を説明し、Aとヴィオは通してもらえることとなった。

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