【小説】能力者が通う学園第二章【募集企画】 (ページ23)

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第73話「意気投合」わいんれっどページ23

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　鋼が珍しく、自分から人を誘いに行った。あれは確か……月城アヤ、だったか。第一印象は確かに鋼と似ているものがあるか。引っ込み思案と言うか、内向的と言うか。まあ、やるときはやる鋼だ、放っておいても心配ないだろう。
　鋼の様子を見届け席に着こうとすると、誰かが声を掛けてきた。振り向くと、月城アヤの兄、月城リオが立っている。

「相馬雪彦さん……ですよね。僕は月城アヤの兄、月城リオって言います。修学旅行の事なんですけど、宜しければ僕と回りませんか？」
「良いのか？俺としては嬉しい限りだが、妹君と回るのではないのか」

　こういった行事は兄妹で居た方が何かと楽なのではと思ったが、そういうものでは無いようだ。寧ろ他人と関わらせた方が良いと彼は言った。兄とは下の事を色々と気遣うものなのだな。恐らく、先程は妹を気遣って鋼に話し掛けたのだろう。あれが兄の鑑というものか。

「大変だな。俺は三人兄弟なのだが、俺はその末弟でな。下の居る感覚が分からんのだ」
「そうだったんですか。てっきりお兄さんかと思ってました。ああそれと、僕にも料理の事とか教えて頂けませんか？僕も料理が好きなんですよ。出来れば、レシピ交換もしませんか？」
「そうだったか！それは嬉しいな。レシピの交換か。ああ、是非頼む！旅行先や日常で語れる仲間が欲しかったんだ、特に男でな。やはり料理は女性の仕事、という印象があるようで、男でそういった仲間は少なかったんだ！」

　これは嬉しい。料理の話が出来る男は本当に少ない。ついつい声が上擦り饒舌になってしまう。いかんいかん、落ち着かねば。今から旅行が楽しみになるな。旅行でこれ程までに楽しみになったことはないぞ……！

「そこまで喜んで頂けて安心しました。では、当日は宜しくお願いします」
「ああ、宜しく頼む！楽しみにしているぞ！」

　……こんな風にはしゃいでしまっているとどちらが年上か分からなくなるな。我に帰ってみると、こんなにはしゃいで恥ずかしい限りだ。しかし、それ以上に嬉しい、楽しい。話の合う人物と出会うのは。
　鋼もアヤとそんな関係になれると良いのだが。まあ、それはあいつ次第だろうな。