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更に沖田は持っていた石ころを全て男にぶつけ、男が怯んだ隙に「走れ!」とAの腕を取って駆け出す。彼女はいきなりのことに前のめりになりながらも、沖田へ抵抗はせずに彼の引っ張るままにひたすら走った。
しばらく走り続け、多くの人が行き交う商店街に逃げ込む。そこで二人は立ち止まり、膝に手を当てながら呼吸を整える。
しかしAは先ほどの恐怖を思い出して、その場にしゃがみ込んでしまった。
『……大丈夫かィ』
沖田が顔を覗き込むように聞いても、彼女は頷きも首を横に振ることもしない。ただ、自分の膝頭に顔を埋め、小さくなっている。
『ひじか……俺が世話してやってる奴が、この先の交番で働いてるから、そこまで行きやすよ』
「立って」とAに手を差し伸べるも、彼女はピクリとも動こうとしなかった。
沖田はどうしていいか分からず、誰か大人を連れてきた方が良いのかと考えるが、彼の中で信じられる大人はもう、土方という、たった一人の肉親であった姉を亡くした沖田の保護者代わりになってくれている人物しかいない。
『水無瀬……』
沖田が名前を呼んでも、Aは反応を示さずに黙り込んでいる。
『A』
下の名前で呼んだところで何が変わるわけではないが、「A」と呼んだ沖田に、彼女はゆっくりと顔を上げた。
唇を固く噛み締め、手の平をこれでもかというくらい強く握りしめている。更にそこへ力を入れた彼女は、ようやく立ち上がって沖田の後に続く。
交番までの道のりで、沖田は何度もAの存在を確認するように振り向くが、彼女は相変わらず黙ったまま歩いていた。
その姿に彼はもう一度名前を呼ぼうとするも、呼んだところで返事が返ってくるようには思えず、さして長くもない交番までの道が果てしなく長い荒野に感じてしまう。
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ぴよこ - こんにちは。ハルさんが、占いツクールを引退してしまうとは寂しいです。でも、私はハルさんを応援します。 最後に、ハルさんが、大好きです! こんなに綺麗で、感動する作品をかく方を、私は他に知りません。 一番大きです! 今までありがとうございました。 (2018年10月1日 17時) (レス) id: 2dbadd9a51 (このIDを非表示/違反報告)
氷月(プロフ) - 少し涙腺崩壊しましたwハルさんの作品の雰囲気とても好きです!これからも頑張って〜! (2018年8月7日 16時) (レス) id: f4133f3bf1 (このIDを非表示/違反報告)
えまこ(プロフ) - こんにちは。ハルさんの作品全部大好きでした。ひとつ質問なのですが、こちらの作品の続編はもう書かれませんか?新しいことに挑戦しているハルさんを応援しています、頑張ってください。 (2018年6月17日 16時) (レス) id: e4c4f608b1 (このIDを非表示/違反報告)
みぃこ(プロフ) - こんにちは☆最初から読み感動させてもらいました(>_<)これからの更新楽しみにしてます(*^^*) (2018年6月15日 13時) (レス) id: 22f30ee0ea (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - 美鶴さん» わぁわぁわぁ!! 美鶴さん!! ありがとうございます( ´ ∀`) 嬉しいです!! もう来週くらいまで迫ってきてしまいましたが、どうぞお時間が空いた時にでも見ていただけるとありがたいです!! ちゃんと生きてると思いますので、よろしくお願いします笑 (2018年6月11日 21時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2018年3月17日 19時