count 81 ページ32
赤井 side
そろそろ来るのでは、と思っていたが、やはり来た。
ここに来た降谷くんは、以前よりもさらに温度の低い目線で俺を睨みつけ、感情をひた隠しにする彼にしては珍しく怒鳴り散らしていた。
こんな失態を犯してしまうくらい、早乙女のことを思っている彼に真実を伝えてやりたかった。
それでも、先に約束を交わした彼女の強い決心の言葉にだけは逆らえなかった。
『きっと零はそのうち、貴方を訪ねてくる。
それでも、真実は伝えないで。
私から零を出来るだけ引き離す言い方をして。
私は嫌われたって構わないから、零を優先して。』
いつ殺されてもおかしくない組織に潜入開始する前日に、彼女はそう言った。
揺るがない強い瞳の奥は、ただただ愛しい人の事を思っていて、それがいつかの彼女と重なってしまった。
俺と暮らすためだけに、強盗なんて働いて、騙されて、組織に殺された、過去の恋人…宮野明美と。
『大君。』
そう呼んでは、眩しいくらいの笑顔を見せてくれた彼女と早乙女がどうしても重なって見えてしまった。
だから、早乙女のために降谷くんが1番憎悪を抱きそうな、『FBIとの協力体制』を強調して伝えた。
降谷くんの気持ちを思えばやるせなくなって、早乙女の気持ちを考えれば共感してしまって。
自分がいったいどこに立って、誰の背中を押せばいいのか、分からなくなってしまった。
「赤井さん。」
「……あぁ、ボウヤか。」
「安室さんは本当に、早乙女さんのこと大好きなんだね。」
「…そうだな。
ボウヤ、早いところ終わらせよう。こんな惨いことは。」
「うん…。」
重たい空気を破ったのは、早乙女からのメールの着信音だった。
探偵ボウヤのスマホから流れる軽い音の次に、すぐに俺のスマホも振動する。
「もしもし。」
『コナンくんのスマホに送ったから、見て。』
それだけを一方的に言うと切られてしまった。
こっちからも報告したいことがあったのに。
降谷くんも早乙女も、せっかちなところはよく似ている。
「赤井さん…、これって。」
「……まずいな。」
ボウヤのスマホに送られてきた写真は、臓器移植の書類だった。
それも、心臓の。
ドナーは…、“早乙女A”
本名まで特定されているということは…、FBIが保護していたってそろそろ彼女の素性がバレてしまう。
「…作戦会議、しよっか。」
「あぁ。」
ボウヤと、俺。二人分のコーヒーをいれ、作戦会議を開始した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちごって美味しいよね - レイナさん» ありまぁ…、全く気が付きませんでした…。ご丁寧にありがとうございます！ (2019年2月2日 23時) (
レス) id: e4cb51c86f (このIDを非表示/違反報告)
レイナ - 題名の愛してるが愛ししてるになってますよ~ (2019年2月1日 3時) (レス) id: 43b7c4b6ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごって美味しいよね | 作成日時：2018年8月20日 13時
