二十二、 ページ27
ーーーーー数日後、
とある用事を終え私は探偵社に戻るため電車に乗っていた。
横浜市に入り少しずつ見慣れた光景が車窓に映るようになる。
久々の探偵社に心を弾ませながらそれを眺めた。
…と同時に、国木田くんのことを思い出して苦笑した。
私が社にいなかった数日間、
毎日のように電話を通してその日の報告が国木田くんからきていたのだ。
乱歩さんの相変わらずの名推理のことから、
与謝野先生と敦くんが梶井基次郎と電車の中で相対したこと。
…泉鏡花ちゃんという子を保護したこと。
彼女を保護したという連絡が入ったのは昨日のことで。
名前を聞いただけでポートマフィアの人間であることは察せたから今少し急ぎつつ向かっているところ。
電車を降り、次の電車に乗り継ぐため駅構内を歩いているとふいに電話がなる。
相手は他でもない社長で、慌ててそれを取る。
「はい、Aです。
今社に戻っている途中なんですが…え、高速艇ですか?
ええ、港に、私の使っていた…鍵も持っていますよ。」
突然出てきた《高速艇》という単語に困惑しつつ話を聞く。
『敦がポートマフィアに拐かされた。そして今乱歩がその居場所を突き止めた。』
海、という単語で大体の状況、相手の狙いも読み取れる。
「…海ですね。恐らく外国に輸送するつもりで。」
『ああ。今から国木田をそちらに向かわせる。
協力して追躡、必ず連れ戻せ。』
「っ…はい!」
私は走り出す…否、既に走っていた。
幸い高速艇のある港はこの駅が最寄り。
走れば5分とかからない。
それに、きっと国木田くんも走ってる。
彼の理想のためにも、なによりも敦くんの無事のためにも。
…もし必要ならこの力を使うことも厭わない。
そんな気持ちを抱えながら港へと走る。
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朝希 緑 - 素敵な作品です!揺るがない国木田くんwww (2016年9月9日 7時) (レス) id: 30b207dab7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まちか x他1人 | 作成日時:2016年6月19日 11時