新たに色づく物語 2【小説版】 (ページ12)

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オヒメサマ【メランジュール・エドワード】ページ12

淡いブルーのドレスを揺らしながら、メランジュールがシャロンの手を取って談話室を飛び出した時だった。

「我が麗しの姫君、お待ちしていましたよ。」

とすかさず現れたのはエドワード・ニコライその人。
驚きで見開いている桜色の瞳をしっかりと見つめた緑色の瞳、そして絶妙なタイミングでその腰を優雅に折った。

まさかこんなところでパートナーが待ち構えているとは思わなかったメランジュール、そんな彼女の手元がガラ空きなのを察したシャロンはそっと抜け出した。
一方下げていた腰を優雅に再びあげたエドワードは、一人びっくりしたままのメランジュールの手を取ってにこりと微笑んだ。

「ああ、やはり貴女は誰もよりも美しい。
今宵貴方の隣に立つことを渇望した愚かな男をどうか許していただけますか？」
「え、ええ、勿論ですわよ！」
「光栄です、我が姫。」

キザったらしい台詞とともにゆっくりと手の甲に口付けられたメランジュールは、思わずその仕草に息を呑んだ。
台詞こそ、何度砂糖を吐いても吐き足りない甘い言葉だが、容貌が容貌なだけあってその仕草はどこの誰よりも似合う。
呆然としているメランジュールに、にこりと再度微笑んだかと思えば、すっといきなり彼女ごと横抱きにしてしまった。

「ちょ、ちょっと何を、」
「大丈夫です何もしません。」
「こ、こんな状態では、そんなことを言われても信用できなくってよ。」
「メラニー、貴女の怒りは最もですが先ほど言いましたよ、今宵の僕は愚かな男だと。」
「そ、それは…」
「安心して身を任せてください。」

言うが早いか絶妙な調子で階段を降りていくエドワード。
そう、ここレイブンクローの塔は他のどの寮よりも高い位置に存在している。
メランジュールはすっかり失念していたが、入り口先でエドワードが長いこと待っていたのはこの事もあったからなのだ。

「…エド。」
「はいなんでしょう。」
「…その…」

自身のすぐ近くにある端正に整った顔。
ピシッと着こなしたタークトーンのタキシードは上背のあるエドワードには良く映えている。
途端羞恥にかられたメランジュールはすっと視線をそらしてしまう。

するとカツンと止まったエドワードの足取り。

「さあメラニー、参りましょうか。」

黙りこくってしまったメラニーを優雅に下ろし、握ったままの手を取って歩き出したエドワード。

「っ、」

その背中に揺れるアッシュブロンドをほんの少しだけ恨めしく思ったのは、秘密。