２７-1 [N side] ページ29
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20代前半、火遊びに目覚めた俺をずっと兄貴のように心配していた人がいた。
当時の俺に個人マネージャーとしてついていた、九条くん。通称、きゅうくん。
きゅうくんは、ささやんの次に長く俺ら嵐に現場マネとしてついている。
「ニノの才能を、ムダにしないように、いつか僕がその才能を花咲かせるためにね？ニノを守るのが僕の使命なんだよ。わかってる？」
やんちゃしすぎた次の日、きゅうくんがよく俺に向かって言ってた言葉だ。
「きゅうくん、心配しすぎなんだって。あと俺を買い被り過ぎ〜」
俺はいつもその言葉にヘラヘラと笑い返していた。
俺が、あるとき、トラブルに巻き込まれた時があった。
そのときのきゅうくんを、俺は忘れられない。
いつも比較的おっとりとしたきゅうくんが、みたこともない顔つきであちこちに指示を出して、電話して、走り回って。俺はみたこともないそのきゅうくんの姿にただただ圧倒されて、きゅうくんに言われるがままに事務所の奥に座らされて。
「何をやってるんだ二宮！」
事務所の偉い人は俺を怒った。正直、俺にも非はあったけど、不可抗力ってやつだった。でも、オトナはそんな言い訳通用しない。でもそこで俺をかばったのはきゅうくんだった。
「怒鳴るなら、俺を怒鳴ってください！」
そして全てのトラブルが収束した頃、疲れ切った顔できゅうくんは俺にこういった。
「俺は、ニノを信じてる。だから、今回のこと吹っ飛ばしてやるくらい、俺とニノと、みんなで、上に上がってやろうよ」
俺は、ちょっと泣きながら頷いた。
きゅうくんは、俺が硫黄島のオーディションに受かったとき死ぬほど大喜びしてたし、ギャラクシー賞を取ったときなんか泣いてるくらいだった。大袈裟、ほんと、きゅうくんはいつも大袈裟。でも、そんなきゅうくんの喜ぶ顔が見たくて、俺は仕事を頑張れている気もしてた。
きゅうくんには、婚約者がいた。
大学時代からの付き合いらしく、俺も何度かその人に会う機会があった。
きゅうくんがその人に見せる笑顔は、男の俺もドキッとするくらい彼女を愛している、カッコイイ男の顔だった。
俺はそんなきゅうくんに微かに憧れを抱いた。
きゅうくんは、今も、その子のそばで笑っているだろうか…。
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作成日時：2016年4月25日 20時
