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１.
あの日、あのとき。
思い出す記憶というものが全て綺麗なわけではない。
きっと私も、あなたも、過去から離れられなかっただけだったのだろう。
ｰｰｰｰｰｰ
私が働くのは、イケメンタレントばかりで有名な芸能事務所。そこで事務をやりつつ、たまにデスクマネジメントの手伝いもしている。デスクマネジメントはよく知られる「芸能マネージャー」の仕事のひとつだけど、私はタレントのそばで働くわけではない。デスクマネージャーが行う仕事は、タレントのスケジュール管理や仕事依頼のメール対応などデスク上でできる仕事だ。仕事の少ないタレントの担当なら、一人で受け持つ仕事も、人気タレントとなれば、分担が必要となってくる。例えば…、
「A、ちょっといいかな？」
『はい、』
デスクチーフに呼ばれ、奥の部屋に向かった。そこにいたのは、私がたまにデスクマネジメントをするグループ、嵐の、現場チーフだった。嵐の現場マネたちは毎日忙しく現場を行き来しているため、こうして本社にいるのはとても珍しいなと思った。
「実は、Aにお願いしたいことがあってね」
『はぁ、なんでしょうか？』
そこで口を開いたのはデスクチーフではなく嵐の現場チーフ、笹沢さんだった。
「実は、Aさんに、現場に異動してもらいたいと思って」
『私が、ですか？』
「うん、この間、現場マネが１人辞めちゃってね。ほら、Aさんなら嵐のデスクもたまにやってもらってるし、なんとなく現場も分かるかなって」
『でも、デスクと現場ってだいぶ違うじゃないですか！というかその前に、今月嵐って新しい現場マネ配属されたばっかりのはずでは…』
「まー、その配属された子が辞めちゃってね」
『え、えぇ…』
「新しい現場の子入ってくるまでの臨時でいいから。ね？志井さんからもAさんの仕事がデキるっていう話よく聞いてたし、お願いだよー。今嵐忙しいんだよー」
『今というより、いつも忙しいじゃないですか…』
するとデスクチーフの志井さんもお得意の困り顔で(この人はとても困り顔が似合う。例えるなら、嵐の大野さんが昔映画で演じていた役みたいに)頼み込まれた。
「A、現場も入社研修で少しやったことあるし、大丈夫だって！事務の方も最近入った子がAの教育のおかげで仕事覚えが早いから、結構仕事がスムーズに回ってるって聞いたし」
うわ、やられた、丸め込まれたなコレ…。
『…わかりました。引き受けます』
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作成日時：2016年4月25日 20時
