あぁ、描きたいほどに......【斎宮宗】

魅惑の紅茶 ページ11

『【A。絵は描いてもいいが、床ではやめてくれ。通路を塞ぐことになるんだよ。】』

店主がその子に向かって注意をしているが、

その子は 反省はしているが絵を描くことを邪魔されたのは不満だ というように顔を背けていた。

背けた方向は僕がいる場所と反対方向で、どんな表情か分からない。

しかし、遠慮がちに筆へ伸びている手からは

――まだ描き足りない――

という気持ちが表れていた。

不思議な子だ

そんなことを思いながら 僕は紅茶へと手を伸ばし、

途中まで読んでいた本の続きを開いた。

紅茶からは ほんのり春の香りがして、、、、


店主とその子は結構な間話しているようだ。

「え？！！」

近くで大きな声がした。

この声はさっきの不思議な子だろうか。

「【急すぎるよ！！】」

横を見ると、立ち上がって店主に抗議する その子だった。

店主は

『【ごめんな、A。今日はもうそろそろ閉めないと、行事に遅れるんだよ。】』

と申し訳なさそうにしている。

振り返って 僕にも話した。

『【すまないね ムッシュー 宗 この後外せない用事があるんだ。今日はここら辺でお暇してくれるかい？】』

彼は何か企んでいるようにも見えたが、
面倒事は僕としてはごめんなので、素直に帰ることにした。

『【いや、大丈夫なのだよ。 次はゆっくりできることを願うね。】』

と、言えば

『【申し訳ない】』と一言返ってきた。

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