一ノ皿《桜が一番似合う君がそこにいた》 ページ1
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「そっか、体育館とかないもんね」
友達がいない特有の独り言を呟きながら屋外で行われる始業式で周囲を少しチラチラと見渡す。
中学の時のクラスメイトがすぐ近くにいたりするが話しかけづらい。
まだ始業式は始まらないからみんな並んでいるとはいえ少し移動しておしゃべりなどをしている。
友達同士でするのは普通のことなのに、友達がいないだけでこんなにもボッチ感が増すのはどうしてなんだろう。
…わぁ桜が綺麗〜(遠い目)
ほんっと、地元にもそこそこいい感じの桜並木はあるけど、ここみたいなまるでアニメの世界だけに許されたようなほど華やかではないよ。
「どうやったらああなるんだろ……」
誰に聞こえるでもない言葉がポツリと地面に落ちた頃に始業式の司会が始まりの言葉をマイク越しに放った。
案外司会などの話を聞いていると時間は潰せるけど、断じて面白くないのでどうしても昨日夜更かしして観たアニメのことや推しのことを考えてしまう。
つまり話を一切聞いていないというね。
「続きまして、式辞を頂戴致します。遠月学園総帥、薙切仙左衛門様」
あっやばいかなり流してた。
進行は今どこら辺なのだろうか……まあ、なんとかなるよね。そういうことにしておこう。うんうん。
どうしようめちゃくちゃ良い事(?)言ってるみたいだけど総じて実力主義なこと言われてる気がする()
捨て石とか言い始めたぞあの御方。
まあ要約すると……頑張れっ!てことなのだろう。多分。
スルースキルのせいで話を中途半端な形でまとめていたら、ひらりと桜の花弁が一枚鼻に落ちた。
少し驚いてゆっくりと鼻に落ちた花弁を掌に乗せてその柔らかい感触を堪能していたら、いつの間にか総帥様がいなくなっていて、司会がまた壇上に立っていた。
「最後に、本日編入する生徒を一名紹介します」
その言葉がいやに耳の裏に張り付いくように聞こえた。
否、もはやその言葉を何十回も、何百回も、或いはそれ以上聞いたことのあるような既視感があった。
そして、その既視感の答えが知りたくて司会の消えた壇上をマジマジと、そりゃあもうアニメ放映中のPCに齧り付くかのように見ていたら…………
あらわれた。
君が。
「いや〜なんかすいませんね〜」
「いいからはやくお願いします……!」
「じゃあ手短に、二言三言だけ……」
「う…ぁ……」
思わず言葉にならない声が出た。
掌にあった桜の花弁がはらりと柔らかく落ちた。
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Arisu@限界初心者(プロフ) - この作品好き。めっちゃ好き。分かりみが深い。 (2022年11月19日 5時) (レス) @page3 id: a5be711894 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空太郎 | 作成日時:2020年5月20日 2時