21.儚さ ドラコside ページ21
ｽｯ
「クロウ？少し落ち着いたか？」
クロウと教室から1番近い坪庭のベンチに腰を下ろす
だいぶ震えはおさまってきた様子だが
さっきの動揺の仕方を見る限り相当怖ったのだろう
ﾎﾟﾀｯﾎﾟﾀｯ
『ごめんなさい…ドラコ…』
授業を抜けさせちゃって…と謝るクロウ
眉を下げ、大きな目からは涙が溢れている
「そんな事気にするな、大丈夫だから」
いつもは凛していて、笑顔で明るいクロウ
時々怖がる時はあるものの、
涙を流しているところは初めて見た
僕は彼女が今にも壊れてしまいそうで思わず抱き締めてしまう
ﾌﾜｯ
「(良い匂いする…
強く抱き締めたら骨が折れてしまいそうだ…)」
抱き締めた瞬間に彼女の良い匂いが香る
そして、自分より遥かに華奢な体に力を弱める僕
『ドラコ…？』
いきなりで驚いたのだろう、クロウが顔を上げようとしてくる
でも今、僕は絶対だらしない顔をしてるから
見られたくなくて、慌てて君の頭を撫でる
「…落ち着くまでしててやるから」
嫌がられたらどうしよう、と不安に思いつつ
僕で良いなら頼りにしてくれ、と自信なさげに言う
『うん…ありがとうｯ…』
クロウはそう小さな声で言うと
僕に縋り付く様に抱き締め返してきた
「ｯ⁉︎」
嫌がられるかも、そう覚悟してた僕は彼女の行動に少し驚く
でも、この一時だけでも僕を頼ってくれて
不謹慎かも知れないが、嬉しくなってしまう
「(心臓の音がうるさい…
クロウに聞こえてしまわないだろうか)」
まるで耳の隣で鳴っているかの様に胸が高鳴る
こんなに近くに、それも自分の腕の中に
好きな人がいるんだから
ｽｰ…
「…？寝てしまったのか？」
涙がおさまり、気が抜けたのか
静かに寝息を立てているのが分かる
「全く…」
次の授業はサボらなきゃならないな、と思いながら
彼女が僕にだけ気を許してくれた様な気がして
凄く胸が暖かくなった
「(でも、暗いのが苦手なのは知ってたが
それよりも怖いものって事だよな…)」
暗闇だけならクロウはきっと退散させてた筈だ
聡明で、芯のある彼女がそれ程怖がるもの…
吸魂鬼、いや、例のあの人だろうか…
「(まぁ、どんなものであれ
僕が守ってやりたいな…)」
そんな事を考えながら、
僕の腕の中で眠るクロウの頭をそっと撫でた―
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作者名：戯言。 | 作成日時：2021年12月20日 21時
