Per mare per terram -アズカバンの囚人- (ページ1)

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１.自覚　ドラコside ページ1

新学期ホグワーツ特急内―

「…好き、か…」
僕は夏期休暇中にここ最近の変な感じの正体に気付いていた

「(思えば初めて会ったあの時からかもな…)」
当時10歳だったあの日、
僕の髪が綺麗だと、笑った顔が素敵だと、
なんの恥ずかし気も無く眩しい笑顔で言ってきた時から
僕は彼女に一目惚れしていたのかもしれない

「(だからと言って今の関係が崩れるのは怖い…)」
クロウから振られて笑顔を向けられなくなったら、
なんて考えたら…僕は立ち直れるだろうか…

ｺﾝｺﾝｯ

思い耽っているとコーパメントの扉をノックする音がする
このコーパメントには今、僕しかいない―

『ドラコ、ここ一緒に良い？』
クロウだった。フィデスも一緒だ

「あぁ、構わない」
そう言って平然を装いつつ、向かいの席へ案内する

『ドラコ、背高くなったね！
あ、髪型も変わってる。かっこいい』
そう言いふわりと笑うクロウ

「クロウが縮んだんじゃないか？」
『私だって伸びたもん』
君があの日褒めてくれたから、なんて言える訳も無く
少し揶揄うと君は頬を少し膨らませる

「ｸｽｯそうだな。クロウの髪型も似合ってるよ」
その姿が可愛らしくて僕は思わず笑ってしまう
そして、彼女の髪型に視線がいく
いつもは下ろしてる髪が今日は高い位置で結ばれている

『ふふっありがとう』
少し頬を赤らめ照れたように言うクロウ

それからクロウは
母と作ったのだと、マドレーヌを出して来た

『こっちがココアで、こっちはオレンジピール入りのプレーン
ドラコも食べる？』
「あぁ、ありがとう」
彼女が作るお菓子は味は勿論美味しくて、
食べると暖かい気持ちになれるから僕は好きだったりする

「クロウはお菓子作りが好きなのか？」
『お菓子作りも、料理も好きかな』
食べてくれた人が美味しいって
笑顔になってくれるのが好きなの、と微笑むクロウ

「君らしいな」
『そうかな？勿論食べるのも好きだよ』
「そこもだな」
クロウは表情豊かだ、しかもそれを隠そうとはしない
そんな様子を見ているとこっちも自然と笑顔になる

「(彼女が僕の好意に気付いてしまうまでは
好きでいても良いだろうか…)」
どうかバレてしまいませんように、と願うドラコだった―