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『そう簡単にふってもらえると思わないほうがいいよ』
大ちゃんちからの帰り道。
星の瞬きの音すら聞こえそうなほど静かな夜道のなかで、大ちゃんの言葉は妙な重みを持って、おれの心に残っていた。
なんだよ、あの無茶苦茶な脅し文句は。
しかも、言うだけ言って大ちゃんはそのままソファーで爆睡。
大ちゃんくらいなら抱っこしてベッドまで運べないこともないけど、空き缶の散らばった部屋の片付けを全部押しつけられたんだから、そこまでしてやる優しさはあいにく持ち合わせてない。
ブランケット掛けてやっただけでも感謝しろよ、と恩着せがましく思いながら、
かじかむ手をコートのポケットに突っ込むと、スマホのバイブレーションが指先を震わせた。
しばらく待っても止まらないから、ラインじゃなくて電話だ。
寒いしどうしよっかなってちょっと迷ったけど、緊急の電話だったら困る。
でも、取り出したスマホのディスプレイに表示されてたのは、おれの新米恋人の名前だから、さらに追加で迷う羽目になった。
「……もしもし」
まあ、なんだかんだで出てあげるよね。
おれってば根が善人だからさあ。
『あ、伊野尾ちゃん。ごめん、いま大丈夫だった?』
「大丈夫か大丈夫でないかで言えば大丈夫だけど」
『回りくどいけど大丈夫なのね。よかった』
「なに、なんか用?」
つい素っ気ない言い方になるのは、ポケットから出さざるをえなかった右手が凍えてるから。
寒いと人間って余裕がなくなる。
だけど、おれの本能的な不機嫌をもろともせず、
というか気付いてないのか、山田はどことなく地に足つかない声で続けた。
『用事ってほどじゃないんだけど、伊野尾ちゃんいま何してるのかな、って』
そうだ。山田ってそういうタイプだ。
恋愛に対しては女の子みたいに夢見がち。
大ちゃんは山田は男だから今までの子とはひと味違うとか言ってたけど、ぶっちゃけこういうとこは似たようなもんな気がする。
今までは個人で連絡が寄越すのなんて月に一回あるかないかだったくせに、恋人になった途端ぐいぐい来やがって……と、意地悪を言うのはさすがにやめておいて。
「いまはね、大ちゃんちから家に帰ってるとこだよ」
『えっ!いまあんた外にいんの!?』
「そうなるねぇ」
あくまでものんびり答えたおれに、山田は「えっ!?」と再びすっとんきょうな声を上げた。
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時