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「違うよ。やっぱ全然違う、みたい」
「みたい?」
「おれも初めて実感してっから」
くしゃ、と照れたように山田が笑うと、パシャリとシャッターが切られる音が聞こえた。
さすがプロのカメラマン。
こんな状況でも、シャッターチャンスは確実に押さえていく。
スナップショットなら話は別だけども、基本的にグラビア撮影で私語ってのはあんまりよろしくない。
でも、今回はいっそ話しながらの方がいいかもしれない。
会話の内容は聞こえてないだろうけど、スタッフもそう判断したらしく、
ひそひそと会話を続けるおれたちにストップの声はかからなかった。
「今はお仕事だけど、たとえお仕事じゃなくてもこうやって伊野尾ちゃんに触ってもいいんだなぁ、とか思うとね、もうヤバいよ」
「触ったことないじゃん、まだ」
「うっせーな。いつか触ってやるから」
「うわ、堂々の痴漢宣言。慧こわーい」
「おいこら」
合間合間にシャッター音が聞こえるたびに、背筋が伸びるのはきっと山田も同じだ。
染みついたプロ根性は、無意識の時こそ発揮される。
ちらりと盗み見た横顔は、メイクさんに施されたチークのせいだけじゃなく、ふわりと桃色に染まっていた。
「山田はさ、おれと恋人になってなにがしたかったの?」
「え?」
「恋人じゃないとできないことがしたいから、告白したんでしょ?それってなに?おれに触りたかったの?」
「そういう言い方されると人聞き悪すぎねえ?」
視界の端で、じろっと山田が睨んでくるのが分かったけど、
素知らぬふりでレンズに向かってウインクしたりして。
ふ、と息を漏らしながら、山田は「えー、なんだろ…」と僅かに浮ついた声で呟いた。
伏し目がちになって、まつげが目元に淡い影を落とす。
すかさず聞こえるパシャリ。
カメラマン、よく分かってるなあ。
「ごはん作ってあげたいなとか、爪切ってやりたいとか、夜寝る前に電話して声を聞きたいとか、朝一番最初におはよって言われてみたいなとか……」
「細けーなぁ」
「妄想力高い系男子だから」
「なんだそりゃ」
ふわふわ。山田の声は夢見心地だ。
「あ、ミニスカ履かせたい、もある」
「ごめん、それはキモいわ」
「冗談だよ、ばーか」
にや、と笑った山田の目尻がふやけてる。
「あとはね、」
ふいに、腰に回された手に力がこもった。
山田の吐息を耳元で感じる。
いつかのコンサートで勝手に借りた、あの香水の匂い。
「……好き、って言われたい」
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時