Stand by me 【Arashi・Masaki・Aiba】

２３．また来てます ページ23

連日の撮影と仕事で正直頭を体もギリギリだった。
でも俺は何とか時間をやりくりしては、
あのバーに通うようになってた。
彼女ともだいぶ打ちとけて喋れるようになったし、
バーのひとり飲みも我ながらだいぶ板についてきた気がする。



「相葉さんお願いしまーす」

「あ、はい！」



仕事の合間でも今日は何時に終わるかな、
お店行けるかなってつい考えちゃう。
別に仕事の手抜いてるわけじゃないけど、
一日全部がんばった後にあのお店でひと息つくのが気持ちいい。


何度か行くうちにカウンターの端っこは俺の指定席みたいになってて、
篠原さん―――彼女、篠原Aさんていうんだけど。
俺より３つ年上で、このお店に勤めてもう５年になるんだって。


あ、それでカウンター席の話。
篠原さんは俺がそこに座ると、
他のお客さんが来ないようにって、
いつもすぐ隣の席にそっと「ご予約席」の札を置いてくれる。
もちろん店がホントに混んでる時はそんなことしちゃダメなんだろうけど。



『カウンターまで満席だなんて、
そんなことめったにないですから』



何度目かの時にいつもごめんなさいって俺が言ったら、
篠原さんが八重歯をのぞかせて笑った。



『…え、俺のこと知ってるんですか？』

『はい、もちろんです』



篠原さんは俺のこと一応知ってたみたいで、
なんで？って聞いたら、
前に俺がやったドラマ見てたんだって教えてくれた。
当時篠原さんの仲間内でも結構注目のドラマだったらしくて、
回が終わるごとに役者の所作とか、
リアルなとこが色々話題になってたみたい。



『うわーマジで？
わー超嬉しいです』



あの時役作りの勉強頑張っといてよかったなって、
篠原さんと喋ってて心底思った。



「…」



カウンターの向こうの篠原さんは今日もキリッとしてて、
細い指で色んな作業をこなしてる。
氷つかんだりステアしたりナイフ持ったり…
忙しそうにしてんのに全然テンパってなくて、
やっぱプロってすごいな。
俺の撮影ん時とは大違いだわ…



「お待たせ致しました」



穏やかな声にハッとすると、
目の前に背の高いグラスが出されてた。



「え…これって？」

「ちょっとお疲れなのかな、と思ったので。
そんなに強くないですからよろしかったらどうぞ」

「わーいいんですか？」

「ご贔屓にしていただいてますので」



篠原さんがニコッと笑う。
眼鏡の奥の優しい目にドキンと胸が鳴った。

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