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兵助｢学園長先生、実習のお土産の羊羹です｣

学園長｢おお、そうかそうか｣

兵助｢それと……これ、男女で来店すると貰える特典らしくて。お饅頭だそうです｣

学園長｢おお〜！待っとったんじゃ！｣



箱を渡すと学園長はそそくさと開け始め、中から綺麗な桜型のお饅頭が顔をのぞかせた。



『わあ……』

兵助｢すごい……｣

学園長｢これは見事！｣



美しい桜が二輪。色から形から、とても美しいそれに思わず声が漏れた。



学園長｢いやあ、これは頼んだ甲斐があった！素晴らしい！｣



学園長は手を叩きながら大層喜んでいる。やはりこれが目当てだったらしい。



学園長｢実はな、羊羹を売っている店へ男女で行くと珍しいものが貰えると聞き付けたんじゃが……ほら、わしがホイホイ出歩くと危険じゃろ？常に命を狙われているからのう。そこでたまたま課題の内容に困っていた木下先生と鉢合わせして、課題ついでに買ってきてもらおうと思いついたんじゃ！｣



我ながら名案じゃったわ！と高らかに笑っている。その名案が私たちに簡単に見破られているとも知らずに。これなら兵助の実習は合格確定だろう。



兵助｢喜んでいただけてよかったです。……それでは僕たちはこの辺で｣

学園長｢ああ、待ちなさい｣



そう言って手を伸ばしたのは例のお饅頭が入った箱。まさかそれを如月さんたちへ届けてくれ、なんて迷惑なこと言わないよね？と身構える。



兵助｢どうかされましたか？｣

学園長｢わしもさっき気づいたんじゃが……｣

『……あ、』



二輪の桜の間にある仕切りをつまみ上げると、桜の乗るトレイごと持ち上がり、下から更に二輪の桜が現れた。



兵助｢まさか二段あるなんて……｣

学園長｢わしが全て食べてしまってもいいんじゃが、おばちゃんのご飯が入らなくなると困るからのう。お使いのお駄賃として二人にあげよう｣



そう言って各々の手に乗せられた美しい桜。

学園長！迷惑なことなんて思ってごめんね！！いただきます！！



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兵助｢まさか貰えるとは思わなかった｣

『ええ……いいように使われた甲斐はありましたね』

兵助｢そうだな｣



手中の美しい桜をじっと見つめていたら廊下の突き当たりに差し掛かった。



兵助｢じゃあここで、俺こっちだから｣

『はい、』

兵助｢今日は本当にありがとう。おかげでいい評価が貰えそうだよ｣

『いえ。こちらこそ付き合っただけなのに、ご馳走様でした』

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