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それは男女で来店した客に配っている非売品の饅頭なんだとか。学園長の欲しがっていたのはこれか。Aを見れば同じことを思っていたのだろう、呆れた顔をしていた。



購入した羊羹を食べつつの帰路。隣には美味しそうに頬張るA。行きよりかはだいぶ距離が近くなっていたのが嬉しかった。

学園へ帰還後、木下先生へ報告と土産を渡し学園長のいる庵へ向かった。

案の定学園長は羊羹と例の饅頭が目当てだったようで大層喜んでいた。二つだと思っていた饅頭が実は四つ入っており、駄賃として貰えたのは得した気分になった。



そして別れ際、庵から伸びる廊下の突き当たり。

……俺は何故あんなことを口走ったんだろう。AAというほぼ名前だけの存在だった彼女と行動して、彼女のことを知って。さすがに仲良くなれたなんて自惚れすぎだったかな。図々しかったかもしれない。

……ああ、本当にらしくないことをした。



兵助｢……買って、食べながら帰ってきて、報告して、いまここ｣

勘右衛門｢なるほどさっぱりわからん。端折り方が大胆で雷蔵みたいだ｣

兵助｢……これお土産｣

勘右衛門｢ありがとう兵助！｣



甘味に目がない上現金なヤツ。

帰り道の彼女さながら、この同室も美味しそうに食べるのだから買ってきた甲斐が有る。



勘右衛門｢んで、結局ペアは誰なわけ？……なにこれうんまっ！｣

兵助｢A｣

勘右衛門｢A、………………AA！？｣

兵助｢そう｣

勘右衛門｢逃げられてってそういう……兵助まじか〜｣



もう食べ終わってしまった勘右衛門は俺に背中合わせに寄りかかってくる。ちゃんと噛んだのかな。



勘右衛門｢これであの子と会ったのは八左ヱ門と兵助か。俺も早く会いたいなあ｣

兵助｢一番最初は三郎らしい。しかも長屋に押しかけたって｣

勘右衛門｢は？アイツまじか何も言ってなかったじゃん。ちょっくら〆てくる｣

兵助｢程々にな。ついでにこの土産、ろ組のとこに置いてきて｣

勘右衛門｢よっしゃ任せろ｣

兵助｢人数分しかないから食べちゃダメだよ｣

勘右衛門｢…………多分！｣



羊羹の入った包みを掴んだ勘右衛門はドタバタと出ていった。

隣の部屋に入ったことを確認してから胸元にしまっていた饅頭を取り出す。近づかれた時この匂いを嗅ぎつけられなくてよかった。見つかる前に食べてしまいたいところだけど、

……なんだか勿体ないなぁ。

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