*小さな演奏会〜var8〜【モツside】 ページ32
シュー君とリッちゃんの演奏が終わり、ついに僕の番だ。
二人ともさすがの腕前で、シュー君の即興の変奏曲も、もとが歌曲なんて思えないくらいピアノで弾いてもとってもきれいだった。
リッちゃんのこれでもかというくらいの超絶技巧を見た後の僕のこの易しい曲は、お粗末に聞こえるかもしれない。
けど、変奏曲には変奏曲なりの難しさと見せどころがある。
僕の偽名がコールされる。
さあ、歌苗。
覚悟はできた?
僕はムジ―クを出すときのように音楽の世界へ集中する。
さあ、僕の初恋の歌(きらきら星)、僕の思いに答えてね―
初めのテーマは語りかけるように、ある意味平凡に。
そして、第一変奏から気持ちを乗せていく。
全部で十二個もある変奏。
けど、この十二個だけでは僕の思いを乗せきれないよ。
軽やかな変奏もあれば、しっとりとした変奏もある。
これ、教え子たちに与えた課題の一つだっけ?
ははっ!
僕、こんな凝ったもの渡してたんだね。
パズルのピースのように、一つ一つのヴァージョンに僕の気持ちが当てはまっていく。
きっとこの変奏曲に込められた僕の思いは僕にしかひも解くことができない。
これって確か交響曲二十五番を作った時と同じくらいにつくったよね。
それじゃあ、ヴォルフィーならひもとけるのかな。
でも、よかった。
音楽に込めた思いなどの記憶はまだまだ色濃く残っている。
心が覚えている。
だから、こうやって自分が作った曲を演奏するとその曲に込めた思いが次々と思い起こってくる。
変調する。
ここは僕のどろどろとした感情をぶつけるところ。
音が重なり、胸をえぐられるような悲しさをたたえる。
オクターヴで奏でるのは僕の闇の深さ。
追いかけるように連なる八分音符はいくらでも積み重なる嫉妬そのもの。
でも、これは気のせいかと思わせるようにまた元の調に変調し、この曲の明るさを取り戻す。
スタッカートを交えながらも、彼女への愛おしさをフーガが歌い上げる。
でもここですべてを出し切らない。
まだうたいあげるぶんをのこして、次の二つの変奏で技巧を見せつける。
そして、勝負の三拍子。
左手の十六分音符で右手のメロディを支える。
最後のは軽い音で跳ねるように両手の掛け合いを聞かせて一度の和音で終了。
変奏曲ってこんなにも聞かせるのが大変だったんだねぇ。
僕は一礼し、歌苗に微笑みかける。
さあ、次はルー君の番だよ。
君の「熱情」を、思う存分聞かせてね。
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ヒメちゃん - モツはかわいいし、ベトはなんかツンデレ。なんかたまらないわ。クラシカロイド。(* ∀ *) (2018年9月23日 15時) (レス) id: 5f6a8c1781 (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» ありがとうございます!楽しみにしていてくださいね〜!ズバリお聞きします!誰推しですか? (2017年8月20日 20時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - うおおおお! なんていい子なんだモツはーーー!! ますますモツが好きになりました! 続編楽しみにしてます! (2017年8月20日 18時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» さあどうでしょう!これからも楽しみにしていただけたらとてもうれしいです! (2017年8月19日 21時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - これってベト落ちですか?? あっ ネタバレになるならいいです!おもしろいので毎日楽しみにしています! (2017年8月19日 17時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)
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