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*小さな演奏会〜var7〜【ショパンside】 ページ31

ふう。

何とかミスはなく弾き終えた。

やはり人前で弾くのは苦手だ。

けど、みんなが期待してくれている中で、弾かないわけにはいかない。

サッと布の擦れる音がしてそちらを振り向くと、大家さんが胸の前で手を合わせていた。

上気した頬。

僕は思わずほほ笑んだ。

なんだか嬉しかった。あの表情は僕の演奏に満足してくれたっていうことでいいんだよね?

僕はもう一度、黒鍵に指を持っていく。

同じ音から始まって、同じ変ホ長調でも、このワルツは全く持って雰囲気が違う。

親指、人差し指、中指の三本の指がファンファーレのように一つの鍵盤をたたく。

そこから駆けあがるように登っていく音。

そしてなだらかに下りていく。

それを何回か繰り返し変調。

この調は優雅に。

夢心地に浸らせるための旋律。

そして夢から覚めるような装飾音符。

そのあとにはまた夢のような旋律を紡ぐ。

けど、この旋律はただの夢ではない。

クライマックスにかけてのワンクッションのようなもの。

そしてまた、第一主題を繰り返す。

華やかに、体が思わずうづくように。

そして、分散和音。

ここからが本当のクライマックス。

慎重に音の階段を駆け上がる。

ここまできたら、自分の持てる力を出し切るだけだ。

オクターブからのドルチェ。そして、同じリズムを刻み、高く昇り詰め、頂点へ―

そこから雪の球を転がり落とすように音の階段を駆け降りる。

そしてそこから頂点へ、頂点からさらに上へ、上へ―

とどめのスフォルヅァントで聴衆を現実に引き戻す。

そして、フォルテッシモでフィニッシュ。

余韻が消える。

立ち上がると、温かい拍手がここを包んだ。

いつ振りだろうか。

こんな感覚は久しぶりだ。

僕は一礼し、ステージを後にした。

次のみんなはどう演奏するのだろうか。

そして、あの二人はどんなものを乗せてそれぞれの曲を弾くのだろうか。

僕は誰にも見えないようにふっとほほ笑んだ。

*****

ああ、表現力がほしい!

あの華麗なる大円舞曲を弾いているときに感じていることをかけるような文才がほしい!

*小さな演奏会〜var8〜【モツside】→←*小さな演奏会〜var6〜 【歌苗side】



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ヒメちゃん - モツはかわいいし、ベトはなんかツンデレ。なんかたまらないわ。クラシカロイド。(* ∀ *) (2018年9月23日 15時) (レス) id: 5f6a8c1781 (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» ありがとうございます!楽しみにしていてくださいね〜!ズバリお聞きします!誰推しですか? (2017年8月20日 20時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - うおおおお! なんていい子なんだモツはーーー!! ますますモツが好きになりました! 続編楽しみにしてます! (2017年8月20日 18時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» さあどうでしょう!これからも楽しみにしていただけたらとてもうれしいです! (2017年8月19日 21時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - これってベト落ちですか?? あっ ネタバレになるならいいです!おもしろいので毎日楽しみにしています! (2017年8月19日 17時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛羅♪ | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2017年7月27日 23時

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