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「なあ、そろそろ行かないと間に合わないんだけど」
しばらくの間、抱き締められながら大人しくしていたやぶくんがもぞもぞし始めた
同窓会のお知らせが届いたときから楽しみにしていた様子を見てきたから、これ以上のわがままは迷惑をかけるだけ
ぎゅうっと一度強く抱き締めてやぶくんを解放する
「ネクタイ結ぼうか？」
結びかけだった首元のネクタイ
よろしくと言われて結び直す
きっとやぶくんが自分で結んだ方が綺麗にできるのだろうけど、だって俺はネクタイを結ぶという経験を片手で数えられるくらいしかしたことがないから
それでも結んであげたかった
伝わるかわかんないけど、やぶくんにはネクタイを結んであげる人がいるんだぞって、髪の毛をセットする親しい人がいるんだぞって
周りの人へ俺の存在をアピールできるのなら
結婚している人が左手の薬指に嵌める指輪と同じように
「ゆうとはもっと自分に自信持って」
突然のやぶくんの言葉にネクタイを結ぶ手が止まる
「自分が思ってるよりもかっこよくて、魅力的だから。そんな俺にはもったいないくらいのゆうとがいるのに、他のやつに目移りなんかしない」
顔を赤くしながらも珍しく恥ずかしいことを口にするやぶくん
だから心配するなと言わんばかりに頭を撫でられた
不安が完全になくなることは無いけれど、心は大分軽くなる
「ほら、ニヤニヤしてる暇があったら早く結んで」
頭を撫でていた手が額の方へと降りてきたと思ったら、軽くデコピンされた
そんなにニヤニヤしてたかな
ネクタイも結び終わり、最後の持ち物チェックも終わって、玄関の方へと向かうやぶくんの背中を追う
「駅まで送る」
「いいよ別に」
革靴を履きながら来るなと右手をひらひら
「じゃあ、下まで」
「わかった、わかった」
呆れ顔の中にちょっぴり嬉しさが混じってるのは分かってる
革靴を履いてどう？ と手を広げながらその場で1回転したやぶくん
「良いと思います」
俺としては全然良くないけど
最後に匂い付けのためもう一回ぎゅうっと抱き締める
「楽しんできて」
「全然心こもってないんだけど」
目尻を下げて笑う姿はやっぱり可愛い
少し長めにキスをして
「んじゃあ、行くか」
やぶくんの家を後にする
玄関の扉を開けたやぶくんの耳が少し赤いのを信じて、心の広い大人のフリをしよう
「いってらっしゃい」
さっきよりは心がこもってるはず
「いってきます」
愛しい後ろ姿が見えなくなるまで見送った
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名無し84745号(プロフ) - 凛花さん» コメントありがとうございます。感想が聞けてすごく嬉しいです！ (2019年4月13日 12時) (
レス) id: 8ba8fca067 (このIDを非表示/違反報告)
凛花(プロフ) - コメント失礼します！凄く素敵でした！ゆとやぶ大好きなので書いてくださり本当に有り難いです…！ (2019年4月12日 21時) (レス) id: d67589c485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し84745号 | 作成日時：2019年2月3日 23時
