プロデュース科の一期生はキツくて優しい【追憶】 (ページ5)

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５　見た目は不良、中身は真面目？ページ5

アイドル科の校舎内に不良って...。

荒れているとは聞いたけど、ここまでとは思っていなかった。

なんて失礼なことを考えていると、その不良(仮)さんが訝しげにこちらを見つめてくる。

そこで、ハッと意識を取り戻した。

『こちらこそすみません、ぼうっとしていて』

「あぁいや、ぶつかって悪かったな。どこか痛めたりしてねぇか？」

私が謝ると、不良(仮)さんは私にそう尋ねる。

一応怪我などないか確認して頷けば「そうか」と言って不良(仮)さんは頬を緩めた。

もしかしたら、思ったよりいい人なのかもしれない。

「そういえば嬢ちゃん、もしかしてプロデュース科一期生の転校生ってやつか？」

『え？ああ、はい』

突然の質問に驚きながらそう答えれば、不良(仮)さんは自己紹介してくれる。

「俺はアイドル科２年の鬼龍紅郎だ。ま、よろしくな」

『プロデュース科２年、綴A。よろしくお願いします』

「お、同じ学年か。じゃあタメで喋ってくれ。堅いのは苦手なんでな」

『わかったわ。よろしく』

「おう」

私も自己紹介を返すと、差し出された手を握り握手した。

『ところで、どうして紅郎はここに？』

「俺今まともなアイドル活動してねえし、業間が暇だから適当にほっつき歩いてたんだよ」

『そうなの』

私の質問に答える紅郎の話を聴きながら、「授業、真面目に出てるのね」と心の中で呟く。

そうしていれば、今度は紅郎に尋ねられた。

「綴はどうなんだ？」

『私は今日が初登校で、午前中は校内を探索するように言われたのよ』

「なるほどな。じゃあ、俺が案内してやるよ」

『いいの？授業があるんでしょ』

「次は自習だし、どうせ教室には誰もいねえよ』

真面目だと見直した直後の発言に戸惑うが、彼はもうやる気のようなので、従うことにする。

まあ、探索で垣間見えた学校の荒れ具合を見た感じ、授業はきちんと出席してる分、紅郎は良い方なんだろう。

『紅郎が良いならお願いするわ。地図を見て歩くのも疲れたし』

「おう。任せろ」

私の返事に、紅郎は機嫌の良さそうな笑みを浮かべ歩き出した。

しかし数歩歩いたところで、何気なく振り向く。

「今更だが、俺みたいなのとつるんで大丈夫か？俺は元不良だし、一緒にいると綴のイメージが悪くなるぜ？」

『本当に今更ね。そんなの気にするなら、そもそもタメで話したりしてないわよ』

「そうかよ」

私が紅郎の質問をそう一蹴すれば、紅郎はふっと笑った。