23 近況 ページ23
『デッドマンズライブ』から数日後。
夢ノ咲学院は、特に変わることなく、ある意味いつも通りの日々が過ぎていっていた。
変わったことといえば、零が、前以上に私に絡んでくるようになったことくらいだ。
転校してきてからある程度の時間が過ぎて、ここでの生活にもプロデューサーとしての勉強にも、ある程度慣れてきている。
そして、私と他の生徒たちの関わりも増えてきて、今の学院では、私からみると二つのグループに分かれていた。
１つは、(こちらの方が圧倒的に多数派だけど)、私のことを苦手だと思ったり、あからさまに嫌う生徒たちだ。
「女の子だからって期待したのに」「ずっと怖い顔してるし、言葉もきつくて怖い」「女だから何しても甘やかしてもらえると思ってる」...などなど。
それはもう嫌われている。
もちろん、自覚はある。
ついついきつい言葉で話してしまうのも、いつも怖い表情をしてしまうのも、ちゃんとわかっている。
＿＿＿し、直そうとは、している。
ただ、いくら努力しても、私の表情は動いてくれないし、優しく話そうと頑張ってみても、二言三言話しているうちに必ず素が出てしまう。
きっと親のお腹の中に、優しい「笑顔」と「言葉」を丸っと置いてきてしまったのだ。
これは私にとって、一つの悩みの種と化していた。
そしてもう一つは、私のことを気に入ったり、「優しい」と言って絡みにきてくれる人たち。
圧倒的少数の、周りから見ればいわゆる変わり者だ。
こんな、話しかければきつい言葉で返され、面白いことを言ってもニコリとも笑わない私のどこを気に入ったのかは、私にも疑問。
けれど、人目を気にせず話をしてくれたり、他の人にするのと同じように笑いかけて優しさをくれる人たちにはとても感謝している。
もちろん、感謝の表情などやろうとしてもできなかったけれど。
＿＿とかなんとか、私がここ最近の事情を振り返ってみていれば、後ろからど〜んと言って誰かが乗り掛かってきた。
勢いのままに肩を組み、至近距離で話しかけてくる。
予想はしながらも顔を上げれば、だいぶん見慣れた赤い双眸が私の顔を覗いていた。
「よう、どうしたんだよ？辛気臭い顔してさ。
あ、それはいつもか」
『うるさいわね。なんのために話しかけてきたわけ？喧嘩なら買うわよ』
「はははっ、悪い悪い。見かけたから声かけただけだよ」
『あそう』
そうして零のだる絡みを流す。
零は最近、こうして頻繁に絡みにくるのだ。
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
