15 ライブの準備 ページ15
「さてと、ここにおいてくれ」
『わかったわ』
地下ライブハウスに無事到着し、紅郎から半分奪った荷物を床に置く。
するとそこに、見知らぬ緑の髪の眼鏡の男が近づいてきた。
「鬼龍」
「蓮巳か。ライブ会場の準備は万端みてえだな」
「ああ。......その女子生徒は誰だ？どうしてここにいる？」
『プロデュース科に特別転入した綴Aよ。あんたは？』
「二年の蓮巳敬人だ。夢ノ咲学院の生徒会副会長を務めている。
...それで、綴はどうしてここにいるんだ？」
私が名乗れば、敬人も自己紹介をする。
敬人の質問には、私より早く紅郎が答えてくれた。
「プロデュース科の勉強だけじゃリアルな想像がしづらいってんでつれてきたんだ。
本物見れば、掴めるものもあるだろって話でさ」
「なるほどな。まあいいだろう。プロデュース科で学ぶことは俺たちにはわからないし、もし何か言いたいことがあれば、俺に直接言ってくれ」
『...口挟んでいいわけ？』
「それでより舞台としての完成度が上がるなら問題ない」
『そう。わかったわ』
それだけ言ってしまうと、敬人は人混みの中に消えていく。
まだやることがあるらしい。
そして、敬人と入れ違いになるように、１週間前にも聞いたあの声が入口の方から聞こえた。
「坊主〜。お待たせ、ちゃんと来てやったぜ」
「......おぉ、朔間じゃねぇか」
「あれっ、鬼龍くん。ここで何してんの？」
中に入ってきた零に、紅郎が声をかける。
二人はどうやら知り合いらしい。
世間は狭いものだ。
「ふぅん。おまえは誰ともつるまない一匹狼だと思ってたんだけど、意外だな......。坊主やAと仲良くしてんのか？」
「一匹狼？俺の話をしてんのか、朔間先輩！？」
二人が何やら親しげに話していると、入口の方向からいつの間にか入ってきていた男子生徒が、そう言って二人の会話に割って入る。
よく見ればその子は、よくアドニスの世話を焼いていた子だった。
三人が話している横で、舞台設置などについて観察していれば、さっき人混みに紛れていった敬人が戻ってくる。
敬人はさっきの制服姿とは違い、ロック調の強めな衣装を身に纏っていた。
「鬼龍。とりあえず着替えてみたが、これで大丈夫か？」
「おう。基本的にばっちりだけど、ちょっと微調整させてくれや。
本格的な衣装をつくるのは俺も初めてだから、あちこち不満や不安が残ってるんだわ」
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
