初めまして ページ19
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会社を後にして、櫻井と一緒に飲み会の会場へ向かう。
こうして二人並んで歩くのは、
もう今迄数え切れない程してきたくせに
今の関係になってからは、
何となく私から距離を置いてしまう。
近くに居るとドキドキして疲れてしまう。
櫻井は、そこを不満に思ってるみたいだけど。
｢A｣
ほら。低くて不機嫌な声。
｢ん？｣
分かってるけど嫌だもん。
｢なんでそんな離れて歩くんだよ｣
恥ずかしいもん。
｢別に離れてない｣
｢遠い｣
そう言いながら、私の右手を櫻井の左手が包んだ。
夏の夜はジメジメしてて好きじゃない。
だけど、そんな夜でも櫻井と居れば
こんなにも幸せな気持ちになれるんだ。って、
私はこの時、そう思ってた。
そう思うことを、疑いなんてしなかった。
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飲み会の会場は、いつも決まった居酒屋で。
店内はテーブル席が手前に、
座敷が奥にある。
その座敷でいつも予約してるみたいで、
店員さんに会社名を言うと、案内してくれた。
見渡すと、今日は経理部はもちろん、
人事部、営業部、企画部、広報部などなど。
ホントに色んな部署が来てるみたい。
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｢今日は一段と多いな…｣
櫻井が顔を顰める。
櫻井は、大人数が苦手だ。
｢どこ座ろうか｣
｢こっち｣
櫻井が私の手を引いたまま、
座敷の奥の方にある4人がけの席へ。
きっと奥の端の方なら
人が少ないからだろう。
｢俺、ドリンク頼んでくるけどA何にする？｣
荷物を置いて、メニュー片手に立ち上がる櫻井に
｢ビール｣とだけ伝えた。
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暫くして、ビールを両手に持った櫻井と一緒に
二宮くんが誰かを引き連れて戻ってきた。
｢あれ、櫻井…と、二宮くん｣
｢こんばんは。翔さん、大野さん紹介しなきゃ
Aちゃんキョトン顔してるけど？(笑)｣
あぁ、そうだった、って笑う櫻井。
｢A、コイツは大野智。智くん、コイツが俺の｣
そう言って、私の隣に座る櫻井。
私の前に二宮くん、斜め向かいに大野くんが座った。
いや、ていうか『俺の』って。
なに、その雑な紹介。
｢初めまして、Aちゃん｣
ふにゃ、と笑う大野くんは
まるでお昼寝してる猫みたい。
｢初めまして、大野くん｣
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
