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黒羽そう告げた後、胡蝶の方へと目を向けて
「まァ…既にあなたの継子として、迎えて貰いましたが。」
そう言って、食べ切った団子の串を皿へと戻す。
「では…あなたが一度、継子の話を断ったのは___」
胡蝶がそう尋ねると、黒羽は胡蝶の言葉を待たずして
「断ったのは…あなたに辛い思いをさせたくなかったからですよ。」
少し困ったような笑みを浮かべながら、胡蝶の問いに対してそう返答する。
「師より先に死ぬ弟子なんて…恩を仇で返すようなものでしょう。せっかく時間をかけて教えた知識も…技術も、全てが無駄になる…。」
「それだけじゃない…その間、注がれてきた期待も愛情も…何もかもが無に帰るんですよ。」
「それを知ってなお、継子の話を引き受けるだなんてのは…鬼畜の所業かと思いまして、あの時は断りました。___」
黒羽はそこまで告げた後、一旦口を閉ざした思えば
「これだけ言ってしまえば…『師範思いの良い継子』認定されるんでしょうけど…、」
「正直な話…私はあなたを思って断ったというよりかは、ただ単純に…逃げてしまっただけなんですよね。」
僅かに視線を落としながら、そんな思いを胡蝶へと告げる。
「継子になれば…私はきっとあなたを今以上に慕う、そしたら…後々訪れる別れが辛くなるでしょう。」
「自ら選んだ道であった筈なのに、そんな現実と向き合う日がいつか来るのかと思うと…足がすくみますよ。」
呟くようにしてそう告げた後、黒羽は胡蝶の方へと視線を移し
「…なので私は、当初継子になるつもりなんて微塵も無かったんですが…、」
「カナヲに少々脅されまして、…それをきっかけに継子の件を引き受ける事にしました。」
そんな言葉を目の前の胡蝶へと投げ掛ける。
「脅された…というのは、？」
黒羽の言葉を聞き、胡蝶がそう尋ねると
「カナヲは『私が継子にならないのであれば、自分も継子を降りる』と…そう言ってきたんですよ。」
「その話を持ち掛けられた時…正直ビビりましたね。…カナヲは剣士としての素質がありますから、柱になるであろう人材を潰すだなんて真似は出来ませんし……」
「それに…今後の事を考えた時、蝶屋敷を引き継ぐ事になるのはカナヲだと思うんですよね。」
「カナヲなら…かつてカナエさんやしのぶさんがしてくれたように、蝶屋敷の皆を護ってくれますよ。」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年11月1日 0時
