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某日、蝶屋敷にて
胡蝶が不在の中、診察室では代理を務める黒羽の姿と
顔に大きな傷跡がある、鋭い目付きをした青年の姿があり
「それで…以前の検診から、鬼は何回喰べましたか。」
黒羽がそう尋ねると、青年は不自然に視線を逸らし
「一回…です…。」
そっぽを向きながら、黒羽の問いに対してそう言葉を返す。
対する黒羽は「そうですか」と一言返したかと思えば、
得体の知れない薬品が入った注射器を、青年の目の前へと突き付け
「一生その口…閉ざす事になってもいいと言うなら、どうぞ嘘を吐き続けて下さい。」
「大した覚悟もなく、咄嗟に嘘を吐いたのであれば…今すぐ私への謝罪と自白を。」
「さぁ、どうします？不死川…『玄弥』さん。」
顔色一つ変える事なく、淡々とした口調でそんな言葉を投げ掛ける。
ひしひしと伝わる黒羽の圧を受け、玄弥は黙り込んだかと思えば
「…ｽﾐﾏｾﾝ、」
「鬼は…四回…、喰べました…。」
静かに口を開き、呟くようにして黒羽の問いに返答する。
黒羽は眉間に皺を寄せ、ため息を吐いた後
ふたたび玄弥の方へと視線を向けて
「服、脱いでもらえます？傷跡見たいんで。」
「え…嫌です…。」
「そうですか、では…無理矢理脱がしますね。」
そう言って、玄弥の隊服へと手を伸ばすと
「じ…自分で脱ぎますから…！だから、その…向こう、向いてて貰えますか…、」
「(…女子か、コイツ。___)」
その後、黒羽は玄弥の身体へと目を向けて
「この傷…治りが不自然ですね、」
「鬼化の効力が途中で切れた…とかですかね？本当、アンタは面白い身体してますよね…。」
傷跡を辿るようにして触れながら、着々と診察を進めていく。
その間、玄弥は一言も発する事なく
「……、」
上気した顔を隠すようにして、俯いており
黒羽はそんな玄弥の様子を気に留める事なく、ふたたび身体の傷跡へと触れる。
「それにしても…アンタも何かと傷が多いですよね、」
「ただ…アンタの傷はあれですね、注意力の欠如ってとこでしょう。」
「鬼の再生能力があるからといって、それに頼って…油断してはいけませんよ。」
黒羽がそんな言葉を投げ掛けるものの、
「……」
玄弥は相変わらず、視線を合わせる事なく俯いており
黒羽は玄弥の顔を両手で包み、半ば強引に自身の方へと向かせ
「玄弥さん、話…聞いてます？___」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年11月1日 0時
