94 ページ45
***⠀
___後日、蝶屋敷にて
黒羽は先日の雨で、柄が滲んでしまった着物へと目を向けて
「(これはもう…着れそうにないな…。)」
少し肩を落としながら、そんな事を思っていると
「…紫、」
か細い声が耳へと入り込み、
「カナヲ…何か用、?」
自室の襖を開けると、そこにはカナヲの姿が。
「風柱様が…紫の事探してたから…、それで…。」
少し言いづらそうな様子で、カナヲがそう告げる中
黒羽は一瞬、面倒臭そうな表情を浮かべながらも
すぐに「分かった」と一言返し、部屋の襖を静かに閉める。
そしてカナヲに背を向け、不死川のもとへと向かおうとすると
背後から僅かに羽織を引かれる感覚があり、
「…どうかした、?」
裾を掴むカナヲに対して、黒羽がそう尋ねると
「一人で…大丈夫…?私も…一緒に、___」
心配そうな表情を浮かべながら、カナヲはそう声を掛けるものの
「…大丈夫。あァでも…また殴られたらその時は手当てよろしく。___」
黒羽は冗談混じりの言葉を投げ掛けながら、颯爽とその場を立ち去っていく。
___長い廊下を歩き、角を曲がったところで
『殺』と記された、見覚えのある羽織が目に留まり
「…不死川さん、屋敷内ウロウロして何してるんですか。盗みでも働くつもりですか、」
「生憎此処にはそんな高価なものないですよ。他所でやって下さい、」
自身を探しているであろう不死川に対して、そんな言葉を投げ掛ける。
対する不死川は、黒羽の方へと振り返り
「誰が盗みなんてするかァ…人聞き悪い事言うンじゃねェ」
若干苛立った様子で言葉を返しながらも、
「……」
不死川は黒羽の方へと近づいたかと思えば
「これ…お前にやる。」
懐から小さな木箱を取り出し、それを黒羽へと手渡す。
「何ですかこれ…爆発物とかですかね、」
手渡された箱を軽く揺らしながら、黒羽がそう告げる中
「ンな訳ねェだろ、いいから開けてみろォ」
不死川は黒羽の方へと視線を向けて、早く開けるようにと促す。
「……、」
黒羽は不思議そうな表情を浮かべながらも、手渡された箱へと視線を移し
木箱の蓋をそっと開けてみると、
「…!」
そこには和風な華の装飾が施された、黒い櫛が収められており
「お前…この前ずっと櫛眺めてたろォ」
「欲しいのかと思って…買ったンだけどよォ、…気に入りそうかァ」
66人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時