検索窓
今日:26 hit、昨日:27 hit、合計:13,403 hit

93 ページ44

微笑浮かべながら、黒羽がそう尋ねると



「……、」



不死川は視線を落とすと共に、口を閉ざしてしまい



黒羽はそんな不死川を目にし、溜息をついた後



「アンタは…人の幸せ気にしてばかりで、自分の幸せをちゃんと考えた事ないでしょう。」



不死川に対して、そんな言葉を投げ掛ける。



「匡近は…よく言ってましたよ、『実弥にはもっと自分の人生を大切にして欲しい』と。」



「これを機に…少しは考えてみたらどうですか。…幸せになる権利ってのは、誰にでも平等にあるんですから。___」



そう告げた後、黒羽は不死川の方へと背を向けて



「じゃあ私は…これで失礼します、」



腰に携えた刀へと手を掛け、



何処までも続く、先の見えない道へと足を踏み入れる。















不死川は立ち去ろうとする黒羽に対して、



「 紫、」



いつになくはっきりとした口調で、その名を呼んだかと思えば



「お前の言う通り、俺ァ…自分の幸せなんてまともに考えた事もなければ……自分が今、幸せかどうかも分からねェ。」



「けど、俺ァ自分自身を不幸だと思った事は一度もねェ。むしろ…恵まれてる方だと思ってるくらいだァ、」



静かに口を開き、率直な思いを黒羽へと告げる。



対する黒羽は一旦足を止めながらも、



「…家族を失くして、友まで失くしたというのに…そう思えるのは何故ですか。」



「戦地に立つ度、救えない命を目の当たりにして…心身共に傷だらけになってるというのに……そう言い切れるのは、一体どうしてですかね。」



振り返る事なく、不死川に対してそんな問いを投げ掛けてきたかと思えば



黒羽はほんの一瞬、不死川の方へと視線を向けて



「さっき『分からない』…だなんて言ってましたけど、もう答えは出てますよね。」



「アンタは人の気持ちには敏感な癖に、自分の気持ちには鈍感なようで……私はもう付き合ってられませんよ、___」



軽く溜息をつきながらそう告げた後、



黒羽は振り返る事なく、颯爽とその場を立ち去っていく。

















不死川は去っていく黒羽の姿を、少しの間見つめた後



自身も背を向け、反対方向へと歩き出す。



道中、不死川は黒羽の言葉を思い返しながら



一度足を止め、澄み切った青空と目を向ける。



「(そういえば…雨、上がったなァ___)」



穏やかな風を肌で感じながら、ふとそんな事を思った後



不死川は飛んできた鴉を肩へと乗せ、次の任務へと向かっていった。

94→←92



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
66人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。