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不死川はそんな事を思いながらも、
本人に対して、その言葉を告げるまでには至らず
「___なァ…紫、」
「お前は今、幸せなのかァ」
引き留めるような言動は敢えて避け、
黒羽に対して、そんな問いを投げ掛ける。
「……、…___」
黒羽はピタリと足を止め
不死川の方へと振り返ったかと思えば、
「…不死川さんの考える『幸せ』っていうのは、一体何ですか。」
質問には答えず、そんな問いを投げ掛ける。
「まァどうせ…アンタの考える幸せなんて、あれですよね。」
「刀とは無縁の生活送って、所帯持って子を成して…家族に囲まれ長生きするとかいう……いわゆる『人並みの幸せ』って奴でしょう。」
黒羽はそう告げた後、不死川の方へと視線を向けて
「でも…よく考えてみてくださいよ、…幸せってのは、百人いれば百通りの幸せがあるもんじゃないですか？」
「誰もが皆、その…『人並み幸せ』って奴を望むとは思えませんけどね。」
「少なくとも私はそうですよ。…所帯を持ちたい訳でも無ければ…長生きしたい訳でもない、子供も欲しいとは思いませんね。」
微笑を浮かべながら、淡々とした口調でそう告げた後
「……、」
黒羽は一旦口を閉ざしたかと思えば、晴れ渡った空へと視線を移し
「私の幸せってのは…割と何でもない事ですよ、」
果てしなく広がる青空を見上げながら、呟くようにしてそう告げる。
「日の光が温かい…頬を撫でる風が心地良い、そこらに咲く花は…今年も綺麗に実を結んだ、」
「…今日は師範に褒められた、アオイの作るご飯が美味しかった…、カナヲは最近『手合わせしよう』と自ら誘ってくれるようになった。」
「あとは…そうですね、気に食わない奴虐めて、高い飯奢らせて……終始苛立った様子でいる誰かさんを見るのは、実に滑稽で楽しいですよ。___」
黒羽はそう告げると同時に、不死川の方へと視線を移し
「遠回りな回答になりましたけど…要するに私は今、幸せですよ。」
「何でもない事で喜びだったり…楽しみを見出せる、単純な人間なんで。」
「…だからこの先何があろうと、私は誰よりも…幸せでいられるでしょうね。」
不死川の問いに対して、黒羽はそう返した後
澄んだその瞳の中に、不死川の姿を確と捉え
「アンタは…どうですか、」
「今、幸せですか。___」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年9月18日 10時
