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道中、黒羽は不死川に対して
「不死川さんは…あそこの家主の方と、親しげですよね。付き合い長いんですか。」
そんな問いを投げ掛けると、不死川は少し考えたような様子を見せた後
「あァ…そうだなァ、隊士だった頃から…何かと世話になってるからなァ」
黒羽の問いに対して、そう言葉を返す。
その後、不死川はふたたび黒羽に対して
「それで、お前…さっき話してた頼みって___」
そう尋ねるものの、黒羽は不死川の言葉を無視し
「じゃあ私、こっちなんで…ここでお別れですね。」
「不死川さん、任務お気を付けて。…あまり怪我して来ないで下さいね、こっちの手間増えて面倒なんで。」
淡々とした口調でそう告げると同時に、不死川へと背を向け、歩き出す。
「(このクソガキ…)」
相変わらずの態度に、不死川は苛立ちを感じながらも
「……」
去っていく黒羽の後ろ姿を、黙ってただ見つめており
『私は決して…紫を引き留めようだなんて、真似はしません。』
『あなたも来るべき時に備えて…覚悟を決めて置いて下さいね。___』
…不死川の脳裏には、胡蝶に告げられたあの言葉が浮かぶと共に
懐から小瓶を取り出し、それを眺めながら歩く黒羽の姿が目に入り
「(アイツが死ぬ覚悟を…決めろっていうのかァ…、胡蝶ォ…。___)」
思わず手を伸ばして、引き留めたくなるものの
「……」
不死川は黒羽を引き留める事なく、下ろした拳を静かに握る。
『手…大きいですね、』
___血の滲むような努力をしてきたであろう、自身より遥かに小さな少女の手
『…不死…川…さん…、また…明日も、待って…ますから…。____』
隊に所属する前、罵倒され…何度叩きつけられても、立ち上がってきたその姿
『 藤の呼吸、壱ノ型 藤花繚乱 』
…地へと転がっていた筈の少女は、いつの間にか鬼の頸を切り落とせる程に成長し
『この命が続く限り、私は剣士として生きます。』
瞳の奥に宿したその決意は、今もなお…淀む事などない。
___少女の努力とその成長を
誰よりも側で目にしてきた男からすれば、
死地に向かう少女を引き留める事など…出来る筈もなく
「(剣士として…認めてやるべきだよなァ…___)」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時