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___昔から私には『医者になりたい』という一つの夢があった。



亡くなった私の両親が、診療所を経営していた事もあり



そこで手伝いをしていくうちに、両親のように沢山の人の命を救える医者になりたいと…そう思った。



当時、蝶屋敷の当主であったカナエさんは、私のその思いについて把握しており



『紫、試しに学校に通ってみない?…その方がもっと効率的に学べると思うの。どうかしら、』



そんな話を持ち掛けられ、一度出向いてみたものの



そこで学ぶ事は全て、既知の知識であったため



『もう明日から学校行きません。時間の無駄なので、』



試しに通った学校は三日で辞めて、蝶屋敷の業務をこなす傍ら、独学で勉強を進め



カナエさんやしのぶさんの下を訪れては、医学や薬学について学びを深めていく…そんな日々を繰り返していた。

















…けれど、ここ最近は思うように手が進まず



机上には開いたままの書籍と、何も入っていない空の容器が転がっていた。



晴れる事のない気持ちを抱えながらも、いつも通り業務に取り掛かり



隊士たちに手当てを施し、来客が途切れた際



不注意で薬品が入った瓶を落としてしまい、手には硝子の破片が突き刺さる。



『……、…_____』



自身の手からダラダラと血が滴る様子を、茫然と眺めていると



診察室の戸が開いたかと思えば、やって来たのはアイツ…不死川実弥。



『またお前か…、少し外で待って___』



そう言って散らばった破片を拾おうとすると、不意に手首を掴まれ



『何してンだァ…お前、危ねェだろォ。そこで大人しく座っとェ、』



アイツは落とした破片をすぐさま片付け、床に溢した液体を拭き取っていく。



その後、アイツに『手を見せろ』と言われ



『…嫌だ、』



そう言って手を背後へと隠したものの、半ば強引に腕を掴まれ



『結構深く刺さってンなァ…少し痛ェかもしれねェけど、我慢しろよォ____』



慎重に破片を抜き取り、手際よく手当てを行っていく。



『(見かけによらず器用だな…、)』



手当ての最中、そんな事思うと同時に



アイツの隊服から覗く、痛々しい生傷が目に入り



『(私が負った傷なんて…お前のに比べたらどうって事ないってのに……)』



それなのに、アイツは自分の怪我よりも目の前の私を優先し



傷跡が残らないよう、丁寧に手当てを行うその姿は



『(やっぱり…コイツ嫌い…、)』



何だか無性に腹立たしくて仕方なかった。

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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