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「…は、」
その言葉に不死川が目を丸くする中、
黒羽は不死川の腕にある、傷痕へと触れながら
「アンタのこの傷は…どうせあれでしょう、誰かを護ったり…庇ったりした時に出来たような傷なんじゃないですか。」
目の前の不死川に対して、そんな言葉を投げ掛ける。
「蝶屋敷で手当てをしてると…よくアンタの話を聞きますよ。『危ない所を風柱様に助けてもらった』って、」
「正直私は…未だに自分の事で精一杯なので、アンタみたいに他に気を回せる余裕はないんですよね。」
「…だから羨ましいですよ、人を救ってきた証がこんなに沢山あって…___」
黒羽は傷痕をまじまじと眺めながら、そう告げた後
不死川の手に触れたかと思えば、そこに自身の手を重ね合わせ
「手…大きいですね、」
ふっと笑みをこぼしながら、不死川の方へと視線を向ける。
僅かに触れた体温と、柔らかなその表情に
「……、…___」
不死川の中では、微かな気持ちの揺れが生じるものの
「(……？)」
揺れの正体を掴みきる事が出来ず、
不死川は少し困惑したような表情を浮かべながら、黒羽の方へと視線を向ける。
その間、黒羽は不死川の手を軽く握ったり、離したりを繰り返し
「(私も…これくらい大きければな……。)」
視線を落としながら、ふとそんな事を思う。
その後、黒羽は不死川の視線に気が付き
「不死川さん…？何です、変な顔して…。」
そう尋ねた後、不死川から手を離し
「手入れの邪魔してすみませんね…、今度こそ私は寝るので……後は一人でご自由に。___」
そんな言葉を投げ掛けながら、静かに床へと戻っていく。
「……」
黒羽が戻る中、不死川は先程目にした…黒羽の手を思い出し
「(アイツ…手、豆だらけだったなァ…___)」
…黒羽の手は、年頃の少女の手とは思えない程痛々しく
一目見ただけで、血の滲むような努力をしてきた事が伺える…そんな手だった。
「……、…___」
その手を思い出すと共に、不死川は先程触れられた…自身の手を見つめていると
「不死川さん、」
不意に声を掛けられ、不死川はビクりと肩を揺らした後
「…何だァ…、…」
自身の手から視線を外し、黒羽の方へと振り返る。
「明日…起きれる自信ないんで、五時頃起こして下さい。頼みます、___」
黒羽は淡々とした口調でそう告げた後、
不死川の返答を待たずして、深い眠りへとついていった。
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作者名：雫 | 作成日時：2023年9月18日 10時
