81 ページ32
(No side)
絶え間なく雨が降り頻る中、
「___不死川さん、」
凛としたその声が、耳の奥へと響き
「…男同士、何か募る話でもあるんですか？」
「アンタばかり…匡近独占してずるいですよ。私も混ぜて下さい、____」
不死川が顔を上げ、声のした方へと振り返ると
そこには…傘もささず、微笑を向ける黒羽の姿があった。
濡れた髪から覗く、冷ややかなその視線は
目の前の不死川の姿を確と捉えており、
「アンタ、どうせ…一人で色々と背負い込んでるんでしょう。」
「匡近が死んだのは自分のせい…、かつての私の夢も…叶える事が出来ず、剣士にさせてしまった…。」
「あとは…何ですか、毒を飲み続ける私を止められなかった……いや、気付けなかった…とかですかね。___」
黒羽はそこまで告げた後、不死川の顔を覗き込むようにして、その場にしゃがみ
「そんな後悔ばかり抱えて…一体何になるんです？」
「自分で自分の首締めて…楽しいですか？だとしたらアンタ…かなりのドMですよね。気色悪い、」
嘲笑うような笑み溢しながら、そんな言葉を吐き捨てる。
雨音が辺りに響く中、黒羽は一旦口を閉ざし
「…不死川さん、」
少し間を置いてから、ふたたび名を呼んだかと思えば
「私は…今の今まで、匡近の死をアンタのせいにして…責めたり、殴ったりした事がありましたか。」
「アンタに私の夢を叶えて欲しいだなんて…頼んだ事がありましたか。………ありませんよね、」
僅かに視線を落としながら、呟くようにしてそう告げる。
「確かに私は…今も昔もアンタが気に食わない。だから意地悪しますし、人一倍苦しんで欲しいとも思いますよ。」
「けど、私が故意に仕掛けた訳でもない…よく分からない所で勝手に罪悪感抱えて、ずっと苦しまれるのは……こっちもいい気はしないんですよ。___」
そう告げた後、黒羽は落とした視線を不死川の方へと戻し
「アンタのその目に映る私は、そんなに…可哀想に見えますか、」
「剣士として生きる私は…不幸なんでしょうか。___」
落ち着いた口調で、そんな問いを投げ掛けた後
黒羽は付け足すようにして、ふたたび口を開き
「この質問は…少々酷でしたかね。『不幸だ』…なんて言ってしまえば、アンタにも跳ね返ってきますもんね。」
「アンタだけじゃない…、他の隊士や柱への侮辱にも繋がりますから……別に答えなくていいですよ、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雫 | 作成日時：2023年9月18日 10時
