黒蝶の夢・弍【不死川実弥】 (ページ4)

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(黒羽 side)

初めてアイツの姿を目にした時から、

『(コイツ…嫌いだ。)』

直感的にそう思った。

鋭い目付きに身体中にある荒々しい傷跡。

苛烈で粗暴な言動が目立つ、頭の悪い奴。

容姿含め何もかもが気に入らず、顔を合わせる度に

『…早くしね、』

短く舌打ちをすると共に暴言を吐き捨て、

『あァ…？お前、今何つったァ…』

苛立つアイツを無視し、不本意ながらも手当てを行っていた。

そんなアイツは、何故か匡近と仲が良く

楽しそうに談笑しながら、任務に向かう二人の姿をよく蝶屋敷の窓から眺めていた。

『(アイツ…匡近にべたべたしすぎ…、邪魔…。)』

そんな事を思いながら、アイツに嫉妬の目を向ける一方で

『………、…____』

腰に携えたその刀と、恵まれたその体格を見る度に

嫌悪感や苛立ちとは異なる、別の感情も…アイツに対して抱いていた。

匡近とアイツが去っていく姿を見送った後、

薄暗く長い廊下を歩き、人目に付かない部屋の扉を開ける。

そこにいたのは、二度と目を覚ます事のない一人の隊士と

『ごめんなさい…私を庇ったばかりに…、本当に…ごめんなさい……。____』

その場に泣き崩れ、謝罪の言葉を掛け続けるもう一人の隊士。

蝶屋敷に来てから、数年の月日が経つ中で

私はこの光景を何度も目にしてきた。

どれだけ懸命な治療を行っても、助からない命がそこにはあって

今朝見送った隊士が、冷たくなって帰ってくるだなんて事もよくある。

場合によっては、遺体すら残らない隊士も___

そんな事を思いながらも、ひとまず隊士を落ち着かせ

別室へと移動させた後、ふたたび先程の部屋へと足を運ぶ。

冷たくなった白い肌へと手を触れて、化粧を施し

身なりを整えた後は隠に召集を掛け、葬儀の手配を頼む。

その後は、何事もなかったかのようにして他の業務へと移り

隊士たちに手当てを施し、アオイと共に食事の準備を進めていく。

業務を終え、来客が落ち着いた頃には

自室へと戻り、分厚い書籍を取り出して勉学に励む傍ら

『(そういえば…昨日取ってきた薬草、まだ残ってたような……。)』

薬の調合を行い、複数の試作品を机上に並べていくものの

『………、』

今日、目にしてきた光景が頭の中に思い起こされ

叩き割りたい気持ちを何とか抑え、作った薬品全てを瓶ごと捨てた。