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その道中、黒羽は不死川に対して
「前々から気になってたんですけど…アンタ、何で私のこと下の名前で呼ぶんです？」
「アオイのことは『神崎』って呼びますし、カナヲの事も別に名前で呼んでませんよね。」
常々疑問に思っていた事を、不死川へと投げかける。
対する不死川は、少し考え込んだ様子を見せた後
「匡近がそう呼んでたから…かァ、？」
本人もよく分かっていない様子で、黒羽の問いに対してそう返す。
黒羽はそんな不死川を目にし、軽く溜息をついた後
「…きっしょ、」
そっぽを向きながら、小声でそう吐き捨てる。
その声は勿論、不死川にも届いており
「(このクソガキ…)」
内心苛立ちを感じながらも、不死川は黒羽の方へと視線を向けて
「そういうお前は…何で俺に敬語使い始めたンだァ」
「昔は全く使ってなかった癖によォ」
そんな疑問を黒羽へと投げ掛ける。
対する黒羽はすぐさま口を開いて、
「別に…これはアンタに限った事じゃないですよ。」
「前々からしのぶさんに、患者には敬語を使えと言われていたので……不本意ですけど直しました。…、」
そう答えながらも、黒羽は少し何かを考えた後で
「あァ、でも…アンタに敬語使うのは、それ以外の意味合いもあるかもしれませんね…。」
そう告げる黒羽に対し、不死川は不思議そうな表情を浮かべながらも
「…着きましたね、___」
話をしているうちに目的地へと到着し、
「……」
不死川は『粂野』と名が記された墓へと目を向ける。
___墓の手入れを行い、花を供えた後
不死川は道中買ったおはぎも一緒に供え、静かにその場へと腰を下ろす。
「……、」
線香をあげ、手を合わせた後
不死川はゆっくりと瞼を開け、その場に立ち上がり
後方にいた黒羽の方へと視線を向ける。
黒羽は墓の前へと移動する際、不死川に対して
「アンタは…毎年此処に来てるんですか。」
線香を手に取りながら、そんな問いを投げ掛ける。
その問いに不死川が「あァ」と返答すると、
黒羽は「そうですか」と返した後、線香をあげ、墓の前で静かに瞼を閉じる。
「……」
瞼を開け、黒羽は『粂野』と名が記された墓を眺めながら
「…私は、此処でちゃんと…匡近と顔合わせるのは初めてなんですよね。」
「命日は毎年覚えてるんですけど…なかなか足が向かなくて。ずっと此処には来れてませんでした、」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年9月18日 10時
