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***



その後、食事を終えた二人は花屋へと向かい



「…花は不死川さんが選んで下さい。私はその間、この辺見て回るんで。」



「何でそうなンだァ、お前の方が花詳しいだろォ」



「まァ…確かにそうなんですけど…、」



そう告げた後、黒羽はじとっとした視線を不死川へと向けて



「私は昔、誰かさんのせいで…供える予定だった花を無駄にしているので。それの償いと言う事で…頼みましたよ。___」



そう言って背を向け、街中へと歩き出す。



「(アイツ…何の話してンだァ…?)」



不死川は黒羽の後ろ姿に目を向けながら、そんな事を思った後



「 オイ、紫 」



黒羽の名を呼び、引き留めたかと思えば



「…何ですか、花くらい一人で選べ___」



振り返った黒羽が言い終える前に、口を開き



「あまり…離れンなよォ、」



黒羽の方へと視線を向けて、そんな言葉を投げ掛ける。



「(…は、)」



黒羽は一瞬苛立ちを覚えながらも、微笑を浮かべ



「はい」と一言返した後、不死川へと背を向けて歩き出した。
















その後、黒羽は街中を見て回る中で



「(ガキ扱いしやがって…腹立つ…、)」



先程の苛立ちを抱えながら歩いていると、



「……、」



とある雑貨屋の前でピタリと足が止まる。



黒羽の視線の先には、和風な華の装飾が施された櫛が並べられており



その中でも、黒を基調とした櫛に視線が向くものの



黒羽は敢えて、隣に並べられていた紅色の櫛を手に取る。



「…、…____」



その櫛を眺める黒羽の脳裏には、かつての記憶が思い起こされ



















___今から六年前、黒羽はカナエと街に出掛けた際



その日も黒羽は、雑貨屋の前で櫛を眺めており



『カナエさん、確かこの前…櫛欠けたとか言ってましたよね。私、買いますよ。どれがいいですか、』



隣にいたカナエの方へと視線を向けて、そう尋ねる。



カナエは一瞬目を丸くした後、黒羽に対して



『ありがとう、紫。でも大丈夫よ、欠けてない櫛がまだ他にもあるから…』



穏やかな笑みを浮かべながら、そう告げたかと思えば



『それに…紫はあげる側じゃなくて貰う側でしょう。』



『紫なら…いつかきっと、素敵な男の子から櫛を貰えるわ。だって紫は可愛いもの、』



『…?』



話が見えず困惑する黒羽を目にし、カナエは続けて



『…男の人が女の人に櫛を送るのは、深い愛情の表れよ。生涯、共にしたいと思う人に贈るものなの。』

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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