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後日、黒羽は風屋敷へと出向き



「…早く行きますよ、」



不死川にそう声を掛け、屋敷へと背を向ける。



対する不死川は「おう」と返事をした後、



「(いつもと雰囲気違うよなァ…、)」



黒羽の隣を歩きながら、ふとそんな事を思う。



…黒を基調とした着物には、花の紋様が僅かに描かれており



下ろした黒髪の隙間からは、灰白色の耳飾りが微かに揺れる。



普段付けている髪飾りの位置には、耳飾り同様…色味のない簪を挿し込んでおり



無彩色を基調としたその姿には、陶器のような白肌と真っ赤な紅がよく映える。



「あの…何ですか。さっきから視線が鬱陶しいんですけど…何か用でも?」



不死川の視線に気づいた黒羽がそう尋ねると、



「…いつもの奴、付けてねェンだなァ」



不死川は黒羽の頭部へと視線を移しながら、そんな言葉を投げ掛ける。



黒羽は少し考えたような素振りを見せた後、



「正直言って…あの髪飾りと羽織は私の趣味じゃないんですよね。押し付けられるようにして師範から貰ったので……仕方なく身に付けてますけど…、」



「私用で外に出る時は外してます。…派手な色味はあまり好きじゃないので、」



不死川の言葉に対して、淡々とした口調でそう返す。



その後、黒羽は不死川の方へと視線を向けたかと思うと



「…ところで不死川さん、お昼食べました?食べてないなら、ご一緒しませんか。」



「勿論、アンタの奢りになるんで…何か高いものでも食べに行きましょうよ。」



ニコッと微笑み掛けながら、そんな言葉を投げ掛ける。



「何で俺の奢りになるンだァ…テメェに奢る義理はねェ」



不死川は黒羽の言葉に対して、そう返答するものの



「またまた…とぼけてるんですか、義理なら十分あるでしょうよ。」



「先日、今際の際からアンタを助けたのは何処の誰でした?あそこで見捨てられてたら…アンタ、確実に死んでましたよ。」



「それとも不死川さんは、自分が助けられて当たり前…とでも思ってるんですかね。」



「そうだとすれば…なかなかに厚かましいお人ですね。見損ないましたよ、」



棘のある言葉で黒羽に追い詰められ、



「(コイツ…、)」



不死川はそんな黒羽に対して、若干の苛立ちは感じながらも



「何が食いてェ」



「鰻」



食い入るようにして答える黒羽を目にし、



「(即答かよォ…)」



軽くため息を吐いた後、黒羽と共に食事処へと足を運んだ。

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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