黒蝶の夢・弍【不死川実弥】 (ページ3)

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胡蝶の問いかけに対し、黒羽はすぐさま口を開いて

「そんなの決まってるじゃないですか、」

「『気に食わないから』…理由はそれだけです。」

そう告げた後、黒羽は窓の側へと移動し

眩い日差しが降り注ぐ、外の景色を眺めながら静かに口を開く。

「私が不死川さんに抱く感情っていうのは…師範が思っているより複雑で、拗れに拗れまくってるんですよ。」

「『好き』だとか『嫌い』だとか、単純な言葉では表せない……だから、自分でも時々分からなくなります。」

「私はこの人の事をどう思っていて、この人に対して…何を求めてるのかって。…まァでも、気に食わない事だけは確かなんで、嫌がらせはとことんやりますけど。」

そう告げた後、黒羽は何か思い出したかのような表情を浮かべたかと思えば、

「そう言えば…不死川さんに言われたんですよね、『性格捻くれすぎだ』って。」

「ここまで拗れたのはアンタのせいだってのに…、よく言えたもんですよ、本当。」

軽く溜息をこぼしながら、ベットの上で眠る不死川の方へと視線を移す。

今まで話を聞いていた胡蝶は、静かに口を開き

「複雑…ですか、私から見たら…あなたの不死川さんに対する思いは、割と明確かと思いますけどね。」

そう告げた後、胡蝶はニコッと微笑みながら

「その事に気付かないうちは…どれだけ賢いとは言え、あなたもまだまだ子供だという事です。」

「いつか…素直に受け入れられるといいですね。____」

そんな言葉を黒羽へと残し、胡蝶は用具箱を抱え、颯爽とその場を後にした。

　

部屋へと残された黒羽は、閉められた扉に目を向けながら

「(師範は…一体、何の話をしていたんだろう…。)」

そんな事を思った後、相変わらず目覚める様子のない不死川の方へと視線を移す。

黒羽は静かに不死川を見つめた後、

「……、…_____」

混じり気のない白髪に触れようと、手を伸ばすものの

指先が触れそうになった直前で、その手を元の位置へ戻し、ふたたび窓の外へと目を向ける。

「(…雨…、)」

先程まで降り注いでいた日の光は、厚い雲によって遮られ

薄暗い空からは、地を打つような太い雨が降り注ぐ。

黒羽はそんな外の様子を眺めた後、

「…止みそうにないですね、____」

脳裏に焼きついた記憶を思い出しながら、不死川に対して言葉を投げかけ

決して振り返る事なく、その場から立ち去っていった。