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その言葉に対して、胡蝶が「大丈夫ですよ」と返答すると
黒羽は胡蝶の方へと視線を向けて、
「今後の事についてなんですが…、もう師範から毒を譲り受けるのは辞めます。これからは、自分で作る事にしました。」
「正直、私は…良薬しか作った事がないので、師範のような毒を作れる自信はないですけど…、」
「…もうこれ以上、あなたに色々と気を背負わせるのも嫌なので。自力で何とかしてみせますよ、」
微笑を浮かべながら、胡蝶に対してそんな言葉を投げ掛ける。
「……」
胡蝶はその言葉を受け、少しの間、口を閉ざしながらも
静かに口を開き「…分かりました、」と一言返す。
その後、胡蝶は黒羽と視線を合わせ
「まだ…続けますか、」
神妙な面持ちで、言葉足らずな問いを投げ掛ける。
黒羽はそんな胡蝶を目にし、少し困ったような笑みを浮かべた後
「そんな分かりきった事…今更聞かないで下さいよ。私は一度やると決めたら絶対に折れない、頑固なタイプですよ。」
「元々の気質もあるでしょうけど……蝶屋敷一頑固な、誰かさんの姿を…間近で見て来たのも影響しているかもしれませんね。」
胡蝶に対して、揶揄うような口調でそう告げるものの
「あなたは一体、誰の話をしているんでしょうか。」
にこやかな笑顔と共に、そう言葉を返され
「…さァ、誰でしたっけ。___」
黒羽は胡蝶に合わせ、そう返答すると同時にその場に立ち上がる。
「………」
立ち去ろうとする黒羽の後ろ姿を、胡蝶が静かに見つめていると
黒羽は部屋を出る直前、その場に立ち止まり
「それと…しのぶさん、…今まですみませんでした。」
背を向けたまま、胡蝶に対して謝罪の言葉を投げ掛ける。
「私は…あなたが抱えている罪悪感を知ったうえで、毒を貰い続けていました。悪く言えば…私はずっとあなたを利用していた、」
「『あなたの毒が欲しい』と言ったあの日……私はあなたが断れない事を知っていました。」
「その背景に…私に対する負い目があった事は勿論…、それ以外の理由があった事も…知ってましたよ。___」
そこまで告げた後、黒羽は胡蝶の方へと振り返り
胡蝶の姿を上から下まで静かに眺めた後、
「あなたは…自分自身と私を、重ねていましたよね。」
「…だから、私の気持ちを汲んでくれたんでしょう。」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時