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扉越しに泣き喚く善逸の声が聞こえてきたかと思えば、



「伊之助さん!怪我治ってないのに、まだ動いちゃダメです…!!」



「うるせぇ!俺はもうこんな怪我なんてどうって事ねぇ…何たって山の王だからな!!」



ドタバタと廊下を走る音と共に、伊之助の声が耳へと入り込み



「…っ、全く…あの人達は……。」



アオイは思わず頭を抱えながらも、お盆を持ってすぐさま扉の方へと向かい



「不死川さん、お話の途中ですみませんが…これで失礼します。お怪我の方、お大事になさって下さい。___」



騒がしい善逸と伊之助を叱るため、不死川の部屋を後にした。



「(…大変そうだなァ、)」



不死川は苦々しい表情を浮かべ、そんな事を思う一方で



先程、アオイが話していた事を思い起こし



「(神崎が…嘘吐くとは思えねェけど…、正直…信じ難いっつーか……)」



「(そんな素振り…全くねェからなァ、…)」



そんな事を思いながら、ふたたび窓の外へと目を向けて



薄暗い空の下を舞う、一羽の黒蝶を眺めていた。



















一方その頃、黒羽は蝶屋敷の廊下を歩く中で



とある部屋の前を通り掛かかると、そこには仏壇の前で手を合わせる胡蝶の姿があり



「………、」



黒羽は思わずその場に立ち止まり、胡蝶の姿と仏壇の中で穏やかに微笑むカナエの姿を静かに見つめる。



胡蝶はゆっくりと瞼を開け、その場を立ち去ろうとすると



「紫、どうかしましたか…?」



付近にいた黒羽の存在に気がつき、穏やかな口調でそう声を掛ける。



「いえ、特にこれと言った用はないんですけど…___」



黒羽はそう言いながら、部屋へと足を踏み入れ



仏壇の前へと腰を下ろし、瞼を閉じて静かに手を合わせる。



その後、黒羽は胡蝶の方へと向き直り



「…師範はカナエさんによく似て来ましたね。」



微笑と共にそんな言葉を胡蝶へと投げ掛ける。



「本当ですか、ありがとうございます。姉に似てると言われるのは…嬉しいですよ、」



胡蝶はにこやかな笑顔を浮かべて、そう返答する中



黒羽は胡蝶の身体に合っていない羽織へと目を向けて、



「(褒め言葉として…受け取るんですね、…)」



内心思うところはありながらも、口に出す事はなく



「先程、用はないと言いましたが…今し方一つ用件を思い出しました。」



「少々、お時間いただいても大丈夫ですか。___」

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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