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黒羽が微笑を浮かべながらそう尋ねると
不死川は先程掛けようとした言葉を呑み、少しの沈黙の後で
「そうだなァ…」
そう一言返し、瞼を伏せるようにして視線を下へと落とす。
不死川が沈んだ様子でいる中、黒羽はわざと嬉しそうな様子を取り繕い
「決まりですね、じゃあその日は…昼頃アンタの屋敷に出向きますんで、準備しといて下さいね。」
そう告げたかと思えば、黒羽は付け足すようにして
「何だか…あれですね、日時決めて一緒に出掛けるだなんて……まるで、恋仲の男女みたいだと思いません?」
「これを機に、新しい恋にでも進めればいいんですけど……生憎、こう見えても一途な方なんですよね。___」
冗談混じりの言葉を投げ掛けながら、不死川に背を向けて扉の方へと歩き出す。
そして、立ち去る直前に不死川の方へと振り返り
「では、私はこれで失礼します。」
「一緒に出掛けるの…楽しみにしてますね、___」
いつも通りの笑顔を浮かべ、不死川の部屋を後にした。
「………」
部屋へと残された不死川は、先程の黒羽の言葉に対して一切返答する事が出来ず
「(俺が死なねェ限り…あの笑顔が剥がれる事は無ェンだろうなァ…)」
そんな事を思いながら、落としていた視線を窓の外へと移す。
空は厚い雲で覆われ、日の光が差し込む隙間はなく
「………、」
決して晴れる事のない気持ちを抱えながら、外の景色を眺めていると
「不死川さん、神崎です。お食事の片付けに来ました。___」
黒羽と入れ替わりで、アオイが部屋へと足を運び
「悪ィなァ、飯…美味かったァ」
「お口に合われたみたいで良かったです。…お怪我の方も順調に回復されているみたいですね、」
アオイが不死川の言葉に対してそう返す中、
不死川は少し間を置いてから、アオイの方へと視線を向けて
「神崎、アイツ…紫はお前らの前だとよく笑ってるのかァ…?」
唐突にそんな問いを投げ掛ける。
対するアオイは、少し考え込むような様子を見せた後
「紫は…昔から大口開けて笑うようなタイプではなかったので…、今もそこはあまり変わってないですかね。」
「全く笑わないという訳では無いんですけど…感情が見えづらい事は度々ありますね。まぁ…私はもう慣れましたけど…、」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時